不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
2013年5月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」のご紹介をしたいと思います。


 教育資金一括贈与の非課税制度は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までに、30歳未満の者が直系尊属から一定の契約により取得した教育資金1,500万円までが非課税となる制度です。当該制度を利用するにあたり、非課税の適用ができないケースや、贈与税が課税される場合の注意点等、特に注意すべき事項についてご紹介したいと思います。

 尚、本レポートは「資産課税課情報 第8号(平成25年4月1日)」(以下、「国税庁Q&A」)、「教育費の範囲等(平成25年5月2日)」(以下、文部科学省Q&A)を基に作成しています。


【教育資金管理契約の口座は1つのみ】

 教育資金管理契約を終了することなく、教育資金非課税申告書に係る口座を同時に2つ以上持つことはできません(国税庁Q&A 2−7)。

  平成25年7月
(A銀行と契約)
平成25年12月
(B銀行と契約)
教育資金の非課税 適用可能 適用不可

 上記の場合、平成25年7月のA銀行との契約については特例の適用を受けることはできますが、平成25年12月のB銀行との契約については教育資金非課税申告書を重ねて提出することはできません。

 従って、複数の銀行とお付き合いがあるからといって、複数の銀行と契約してしまわないように注意が必要です。


【教育資金管理契約終了時の課税関係】

 教育資金管理契約は、受贈者が30歳に達した日または受贈者が死亡した日のいずれか早い日に終了することとされており、当該契約が終了した時において、未使用の残高等がある場合には、その残高については贈与税が課されることとなります。

 この贈与税課税においては、信託契約終了時に贈与者が生存しているか否かで次の課税方法が異なります。

  贈与者が生存している 贈与者が死亡している
相続時精算課税 適用可能 適用不可
直系尊属から20歳以上の子や孫が贈与を受けた場合の贈与税率の特例 適用あり 適用なし

 教育資金管理契約の終了時に贈与者が生存している場合、「直系尊属である贈与者」から贈与があったものとみなされますが、契約の終了前に贈与者が死亡していた場合、「直系尊属ではなく“個人”」からの贈与があったものとみなされると規定されています(措令40の4の3(19)一)。

 従って、直系尊属からの贈与であることが要件となっている、「相続時精算課税の2,500万円の特別控除」や「贈与税の税率緩和の特例」が適用できなくなるケースがあるため注意が必要です。


【学校等以外の者に支払われる費用】

 学校等に直接支払われる入学金、授業料等の他に、学校等以外の者に、教育に関する役務の提供として直接支払われる金銭についても当該制度の適用が受けられるものがあります。

 学校等以外の者に支払われる部分については、教育のために支払われるものとして社会通念上相当と認められるものに限られ、具体的には次のような費用が例示されています(文部科学省Q&A 3−1、3−2、4−1、4−2)。

非課税の対象となるもの 非課税の対象とならないもの
学習
(学習塾・家庭教師、そろばん、キャンプ等の体験活動など)
賭博やギャンブルに関するもの
(カジノの手法を教える教室)
スポーツ
(スイミングスクール、野球チームでの指導など)
酒類やたばこを楽しむことを目的とする講習
文化芸術活動
(ピアノの個人指導、絵画教室、バレエ教室など)
遊興・遊技を内容とするもの
(トランプ、パチンコ、麻雀、ゲーム、カラオケ、手品、占い等を教える教室など)
教養の向上のための活動
(習字、茶道など)
娯楽目的の鑑賞を行うことを目的とするもの
給食費、教科書、卒業アルバム代、教科教材費(リコーダー、裁縫セット等) 下宿代
修学旅行、自然教室等の校外活動費 留学の渡航費や滞在費

 上記の非課税の対象となる費用であっても、塾のテキストを一般書店で購入したり、野球のグローブを専門店で購入したりするなど、指導を行う者を通じて購入していない場合には、非課税の対象とはならなくなるため、購入方法にも注意が必要です。

 相続税が発生すると見込まれている資産家の納税者様においては、今回の税制改正で新設された当該制度は、生前対策の一環として非常に興味関心を持たれています。一方で、新設されたばかりの制度であるために、具体的な適用方法に曖昧な部分もありますので、今後の動向にもご注意ください。






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