2013年3月
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今回は、3月22日に発表になりました平成25年の「地価公示」についてご紹介したいと思います。 |
地価公示とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、国土交通省が毎年1回全国の標準地(平成25年は全国26,000地点、うち原子力災害対策特別措置法により設定された警戒区域内の17地点は調査を休止)について不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、一定の基準日(1月1日)における正常価格を公表するものです。これは、都道府県知事が行う都道府県地価調査(毎年7月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。
平成25年1月1日時点の地価公示によると、三大都市圏においては、依然として下落は続いているものの、住宅地・商業地ともに下落率が前年より縮小しています。全地域における傾向としても、平成22年の地価の下落率をピークに下落率が縮小しており、全国の調査地点の内、地価が上昇した地点は前年の546地点から2008地点へと増加していることからも、前年同様に地価の回復の兆しが見られる結果となりました。
東京圏について見てみると、住宅地は平均で△0.6%、商業地は平均で△0.5%となっており、ほぼ横ばいの状況であることを考慮すると、下げ止まりの傾向にあると考えられます。半年毎の地域変動率を見てもほぼ横ばいの状況であり、特に三大都市圏のおいてはこの傾向にあります。
また、東日本大震災で被災した地域に関しては、特に宮城県の住宅地の上昇が目立ちます。宮城県は前年比1.4%の上昇となっており、全国で最も高い伸びとなっています。これは、復興の進展に伴い住宅の新築が増加していることが原因の一つとしてあります。福島第一原子力発電所がある福島県においては、原発周辺から避難する人達の主な移転先であるいわき市において地価上昇が目立ちますが、今年も原発周辺の警戒区域などの17地点は地価の調査を休止しています。
地域別
変動率表
(単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成23年 |
平成24年 |
平成25年 |
平成23年 |
平成24年 |
平成25年 |
全国 |
△2.7 |
△2.3 |
△1.6 |
△3.8 |
△3.1 |
△2.1 |
三大都市圏 |
△1.8 |
△1.3 |
△0.6 |
△2.5 |
△1.6 |
△0.5 |
東京圏 |
△1.7 |
△1.6 |
△0.7 |
△2.5 |
△1.9 |
△0.5 |
東京都 |
△1.6 |
△1.0 |
△0.3 |
△2.8 |
△1.9 |
△0.4 |
埼玉県 |
△2.3 |
△2.3 |
△1.2 |
△2.6 |
△2.6 |
△1.2 |
神奈川県 |
△1.3 |
△1.2 |
△0.3 |
△1.7 |
△1.1 |
0.2 |
千葉県 |
△1.8 |
△2.2 |
△1.2 |
△2.0 |
△2.2 |
△1.3 |
半年毎の
地域別変動率表 (単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成25年(H24.1.1〜H25.1.1) |
平成25年(H24.1.1〜H25.1.1) |
前半 |
後半 |
前半 |
後半 |
全国 |
△0.6 |
△0.5 |
△0.8 |
△0.8 |
東京圏 |
△0.2 |
△0.1 |
△0.3 |
△0.2 |
次に、住宅地と商業地に分けて見ていきたいと思います。
≪住宅地≫
東京圏においては、住宅ローン減税政策等により戸建住宅・分譲マンションともに需要は堅調であり、再開発地域を中心に地価が上昇している地域や横ばいの地域が見られますが、郊外の過疎化や高齢化が進んでいる一部の地域に関しては下落率が依然として高いままであり、二極化が進んでいます。
埼玉県では、浦和区・蕨市・戸田市が横ばいで推移しているのに対し、行田市(△3.6%)・羽生市(△3.2%)・加須市(△3.0%)は前年同様に下落率が高いままです。神奈川県では二極化が特に顕著で、中原区(2.6%)・都筑区(1.3%)は上昇していますが、三浦市(△4.6%)・南足柄市(△2.9%)の下落率は高い状況のままとなっています。
≪商業地≫
東京圏においては、△0.5%とほぼ横ばいの状態になっており、下げ止まりの傾向にあります。特にオフィス系の傾向として、事業継続計画やコスト削減等の観点から、耐震性に優れる新築・大規模オフィスへ業務機能を集約させる動きが見られ、こうしたオフィスが集積している地域の地点の地価は下げ止まりの傾向にあります。また、三大都市圏と一部の地方圏においては、不動産投資信託(J−REIT)による積極的な不動産取得が見られたことも、この下げ止まりの要因の一つとしてあります。
その他、堅調な住宅需要を背景に、商業地をマンション素地として利用する動きも見られ、昨年同様、地価の下落は緩やか若しくは下げ止まり傾向になっています。
安部首相の経済背策「アベノミクス」への期待から、デフレ脱却を見越した投資マネーが不動産市場に流入し、住宅地では消費税増税前の駆け込み需要等もあり、土地取引が活発になってきています。景気回復に伴い、駅から徒歩10〜15分位の場所でも、まとまった土地はマンション業者が買いに入る可能性もあり、広大地の判断が難しくなることも考えられます。判断に迷われた際にはお気軽に当事務所にご相談ください。
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