不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

更正の請求により是認された広大地事例
2013年1月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、当事務所が更正の請求をした結果、広大地として是認されました事案をご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は、最寄駅から約160m(徒歩約2分)の商業地域(指定容積率400%)に存し、現況は自宅の敷地として利用されている地積約1,000平方メートルの間口狭小な不整形地です。

 評価対象地の周辺地域は以前より都心へのベッドタウンとして成熟を増している地域で、分譲マンション、店舗、一般住宅等が混在する地域です。




 そこで、今回のポイントは本件評価対象地の「最有効使用」が(1)店舗用地または(2)分譲マンション用地ではない旨を説明することでした。

 不動産鑑定評価基準によると、最有効使用とは、仮に当該土地を売りに出した場合において、競合する購入者のうち、最も高い価格を提示できる利用方法をいいます。この考え方を基準として今般の事例の最有効使用を見ていきましょう。


(1)店舗用地が最有効使用であるか否か

 評価対象地が東側で接面する市道は、相続税路線価の地区区分は「普通商業・併用住宅地区」に指定されており、店舗等が建ち並んでいます。しかし、評価対象地は当該道路に間口約1.5m及び約4mの路地状部分にのみ接面しているだけであり、評価対象地が有効利用できる敷地は当該市道沿いの他の店舗等の敷地と比較して視認性等に著しく劣ります。

 視認性(顧客の出入りの便、商品宣伝効果等に影響を与えます)という要因は店舗等の商業用不動産として重大な価格形成要因であり、このような土地に、店舗用途を前提とした引き合いを求めることは困難であることの理由から、店舗用地として利用することは最有効使用でないと判断しました。


(2)分譲マンション適地か否か

 「○○県建築基準法施行条例」第4条の大規模建築物の敷地と道路との関係を調べたところ延べ床面積1,000平方メートルを超える建築物(店舗、共同住宅等)の敷地は、道路に6m以上避難上有効に接しなければならないとされています。

 つまり、上記の基準からすると、間口約1.5m及び約4.0mしか接道がとれていない評価対象地上に延べ床面積1,000平方メートルを超える建築物を建築することは不可能です。


 従って、評価対象地は指定容積率400%の地域に存しているものの、実際に使用できる実効容積率は約100%程度に過ぎません。一般に、分譲マンション業者は、その土地にマンションを建築した場合に床面積がどのくらい使えるかを検討し、購入するかを決定します。

 実際に、評価対象地周辺で、近年、分譲されたマンション事例を調べたところ、全てのマンション事例が200%以上で、延床面積が2,000平方メートルを超えておりました。従って、延べ床面積1,000平方メートルを超える建築物を建築することができない評価対象地について、相続時点現在の市況では分譲マンション業者からの需要は弱いものと考えられ、以上の理由から評価対象地の最有効使用を分譲マンション用地ではないと判断しました。

 一方で、評価対象地周辺には、評価対象地と似たような形状をした土地や5,000平方メートルを超えるような大規模地が実際に売りに出され、戸建分譲された事例が複数見受けられました。

 以上、評価対象地の形状及び法令、相続時点現在の市況等から総合的に検討した結果、当事務所では評価対象地の最有効使用を「戸建分譲用地」であると判断しました。

 そして、広大地調査報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断され、是認されました。

 今般の事例のように、駅から徒歩2分、容積率が400%の商業地域内に存する土地でも、広大地として認められるケースがあります。今回、当事務所の主張が認められたのも、県条例や周辺の利用状況、売買事例等を細かく調査した結果であると思います。他にも、幹線道路沿いに存する店舗や倉庫・工場等の敷地として一体利用されている場合でも細かい調査をすることで広大地として認められるケースもあります。

 当事務所では、広大地の報告書作成に限らず、相続税土地評価における考え方等のアドバイスも行っております。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所