不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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高圧線下地の調査上の注意点
2012年12月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、高圧線下地について、調査上の注意点をご紹介したいと思います。


 高圧線下地とは一般に特別高圧(7,000V以上)電線の下に位置する土地をいい、下記の建築制限があります。

物件の種類 距離 7,000V〜
35,000V
35,000V〜
170,000V
170,000V
以上
建造物 離隔距離 3m以上 (3+c)m以上
水平離隔距離 建造物の下方に接近する場合のみ3m以上 3m以上

 このように、高圧線下地ついては土地に一定利用制約があり、さらに上空に高圧電線が存することによる眺望の悪化、電磁波等に対する心理的嫌悪感、電波障害・騒音等、土地利用制約による土地の一体性の分断等のため、一般の土地に比べて市場価値はかなり劣ることが通常です。

 そのため、財産評価基本通達においても、以下のように30%以上の減価が認められています。

 地役権が設定されている宅地の価額は、承役地である部分も含め全体を1画地の宅地として評価した価額から、その承役地である部分を1画地として計算した自用地価額を基に、土地利用制限率を基に評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除して評価します。この場合、区分地上権に準ずる地役権の価額は、その承役地である宅地についての建築制限の内容により、自用地価額に次の割合を乗じた金額によって評価することができます。

(1) 家屋の建築が全くできない場合…50%と承役地に適用される借地権割合とのいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合…30%

 以上、高圧線下地についての概要を紹介しましたが、高圧線下地については上記のように減額が大きい割に、見落としやすい規定でもあります。そこで次に高圧線下地の調査ついて注意すべき点を挙げていきます。


(1)住宅地図による調査
高圧線の鉄塔マーク
 住宅地図では高圧線の鉄塔は右の図のように表示されます。このようなマークが土地の近くにある場合には高圧線下地である可能性を疑いましょう。

(2)法務局での調査

 高圧線下地については、所有者と電力会社等の間で地役権設定契約をし、その旨を登記するのが通例です。従って、法務局で登記簿をもらって地役権の登記がされていないかを確認しましょう。なお、登記がされている場合には、地役権の設定年月日や設定の範囲等を登記簿から確認できます。また、地役権図面を取得することにより、地役権が設定されている部分の位置等を確認できます。

 ただし、高圧線下地の中には、電力会社との契約により前記のような土地利用制約を受け、それに対する補償料を受け取っているにも関わらず、その旨の地役権登記がされていない土地もあります。そのため、登記簿に地役権の記載がないからと言って高圧線下地でないという判断をするのは早計です。

(3)現地での調査

 現地調査により土地の上空に高圧線が確認される場合には、上記(1)の地図記号を基に、その高圧線が張られている先の鉄塔を調べてみましょう。するとその鉄塔を管理している電力会社等の連絡先・鉄塔の番号等が書いてあるはずですので、調査地について土地利用制約があるか等を問い合わせてみましょう。

(4)所有者への聴取

 上記(1)〜(3)の調査により、高圧線下地であることが疑われる場合には、所有者に電力会社等との契約があるかを確認しましょう。上記のように地役権の登記がされていない場合であっても、電力会社との間で利用制約や保証金額についての契約を交わしている場合がほとんどですので、制約の内容を確認できます(ただし、稀に何も契約関係のない土地もあります)。


 以上のような調査を行うことで、対象地が高圧線下地であることを見落とすリスクはかなり軽減できるのではないかと思います。

 本レポートでは、高圧線下地についてご紹介しましたが、このほかにも土壌汚染・埋蔵文化財・地下埋設物・軟弱地盤・崖地等々、土地の調査は複雑かつ専門性の高い要素を含んでいます。そして、これらの中には今回ご紹介した高圧線下地のように、見落とすと税額に大きく変わってしまう土地もあります。さらには、特殊な要因により原則的な評価のみでは時価水準を反映しきれず、鑑定評価による時価申告により評価額を減額できる可能性のある土地も存在します。

 原則的な評価額が高いと感じた際や、特殊な土地についてご判断に迷われた際には、お気軽に当事務所までご相談ください。






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