2012年9月
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今回は、9月19日に発表になりました平成24年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。 |
「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成24年は全国22,264地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、原子力災害対策特別措置法により設定された警戒区域等にある31地点は調査を休止しました。
東日本大震災の被災地における土地への需要は被災の程度により差が見られ、特に宮城県では浸水を免れた高台の住宅地等に対する移転需要が高まり、地価の上昇地点が見られ、石巻市、東松島市等では住宅地及び商業地の全体で上昇しました。岩手県でも宮古市、釜石市等では住宅地の全体で上昇しました。また、福島県でも全般的に前年より下落率が縮小しました。
調査全体の概要としましては、平成23年7月以降の1年間の地価は、全国的に依然として下落しましたが、下落率は縮小し、上昇・横ばいの地点も増加しました。
全国での上昇率順位を見てみると、住宅地は上位10地点がいずれも岩手県及び宮城県で占められていたのに対し、商業地では、上昇率9.8%で東京都墨田区(墨田5−14)が第2位となりました(1位・3位はいずれも宮城県石巻市)。これは、5月に開業した東京スカイツリー周辺で土産物店、喫茶店等の新規出店が見られ、繁華性の向上が見られたためです。
以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。
地域別変動率表
(単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成23年 |
平成24年 |
平成23年 |
平成24年 |
全国 |
△3.2 |
△2.5 |
△4.0 |
△3.1 |
三大都市圏 |
△1.7 |
△0.9 |
△2.2 |
△0.8 |
東京圏 |
△1.9 |
△1.0 |
△2.3 |
△0.9 |
東京都 |
△1.3 |
△0.5 |
△2.4 |
△0.7 |
神奈川県 |
△1.4 |
△0.6 |
△1.6 |
△0.4 |
埼玉県 |
△2.7 |
△1.5 |
△3.2 |
△1.6 |
千葉県 |
△2.6 |
△1.4 |
△2.5 |
△1.6 |
≪住宅地≫
東京都区部は、全体で▲0.5%となりました。住宅ローン減税等の政策効果により戸建て住宅、マンションとも需要は堅調で51地点で横ばいでした。中央区は▲0.4%(前年▲0.9%)でした。湾岸部のマンション需要は堅調で、マンションの大量供給が懸念される中、立地等のポテンシャルからほぼ横ばいに近い状況でした。円高や欧州債務危機等から景気動向に懸念があり、マンションの高額物件について需要が弱くなっていますが、千代田区では希少性から2地点が横ばいとなりました。神奈川県は、全体で▲0.6%となりました。川崎市で0.5%上昇(前年▲0.8%)、横浜市は▲0.4%(前年▲1.3%)でした。都心への接近性に優れることから住宅需要は堅調でした。埼玉県は、全体で▲1.5%となりました。特に、さいたま市は、今後、東北本線の東京駅乗り入れや湘南新宿ラインの浦和駅停車など利便性の向上が予想されることから、供給が少なく需要も堅調な地域で上昇が2地点、横ばいが29地点となりました。千葉県は、全体で▲1.4%となりました。浦安市は、液状化被害が甚大であった地域6地点の調査を去年休止したため、液状化被害の影響が少なかった元町地区4地点のみについての変動率ですが、これらの地点では市場に回復傾向が見られ上昇となりました。「良好な住宅地の供給が少ないこと」、「アクアラインの値下げ効果が現れていること」、「平成24年4月木更津に開業したアウトレットモールの影響が見られたこと」を背景に木更津市、君津市及び袖ヶ浦市では複数の上昇地点が見られ、市全体でも上昇となりました。
≪商業地≫
東京都区部は、全体で▲0.8%で、下落率は縮小したものの下落基調が継続しています。オフィスでは、大規模ビルによる新規供給から賃貸需給は緩和しましたが、立地条件がよく、高スペックビルが多く立地する業務高度商業地域では、オフィスの業務機能の集約ニーズに加え拡張移転も見られました。店舗では、消費動向の回復と外国人観光客の復調が見られ、特に、銀座、表参道等の競争力が強く商業集積の高い地域は、店舗賃料に底入れ感が見られ、横ばい地点も見られました。神奈川県は、全体で▲0.4%でしたが、川崎市全体では0.7%上昇し、武蔵小杉駅周辺再開発事業が進捗する中原区は、6地点全てが上昇しました。その他、川崎駅周辺において商業集積が見られる川崎区等で上昇しました。埼玉県は、全体で▲1.6%で、JR大宮駅周辺では賃料及び空室率の改善が見られ、上昇1地点、横ばい4地点が見られました。千葉県は、全体で▲1.6%で、千葉市全体では▲2.0%で依然中心商業地の衰退が続き、マンション需要も少ないことから商業地への需要は弱含みとなりました。
以上、前回の地価調査に比べ、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えもあって住宅地及び商業地ともに下落率は縮小しました。この堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られるなど、現在までマンション業者が触手しなかった土地であっても、立地条件等によっては、マンション業者の需要が見込まれるような事象が生じてくるものと思われますので、広大地の判定に際して、今後はさらに新築マンションの建設動向にも十分ご注意下さい。
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