不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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財産評価基本通達になじまないケースの検討方法
2012年8月

いつも当レポートをご愛読頂きありがとうございます。
今回のレポートでは、財産評価基本通達6に規定されているとおり、財産評価基本通達になじまないケースについての検討方法について、一部ではありますが、ご紹介したいと思います。


 相続税法第22条において、「相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による」と規定されています。

 ただし、土地等の評価について、納税者の申告の便宜や課税の公平性の観点から、なるべく簡易かつ的確に土地等の評価額を算定して申告することができるよう、財産評価基本通達として路線価等を予め定めて、これを毎年公表しています。

 財産基本通達自体は実務上重要な地位を占めているとしても、法源性を持っている訳ではなく、納税者は財産の評価に際して、財産評価基本通達と異なる取り扱いをして財産の評価、申告をすることが可能です(ただし、納税者独自の解釈により評価した場合には、その評価方法が適切であるか否かについて十分な審理を受ける可能性が高くなることは否めません)。

 ただし、「接道道路との間に著しく高低差がある土地」や「著しい高低差を内在する土地」等、土地の個性が強いものについては、財産評価基本通達によるのみでは、適切にその土地の評価額を算定することができない場合(財産評価通達に基づく評価額が実勢価格を反映せず、あまりにも高くなってしまう場合等)があり、そのような場合のために、財産評価基本通達6で以下のように規定されています

(この通達の定めにより難い場合の評価)
 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

 このような場合には、一般的には以下の規定に従い10%評価減するのが一般的です。

No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価

 [平成24年4月1日現在法令等]

 普通住宅地区にある宅地で、次のようにその利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。

 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
 震動の甚だしい宅地
 1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

 また、宅地比準方式によって評価する農地又は山林について、その農地又は山林を宅地に転用する場合において、造成費用を投下してもなお宅地としての利用価値が著しく低下していると認められる部分を有するものについても同様です。
 ただし、路線価又は倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません。

 ただし、評価する土地の高低差等を勘案すると、上記の減価を反映しただけでは、財産評価基本通達に基づく評価額が実勢価格を大きく上回ってしまう場合が往々にしてあり、このような場合には、以下のようなフローチャートにのっとって評価方法を検討することが多いのではないかと思われますが、いずれにしても多面的な検討が必要で、特に、高低差を考慮した場合の減価につきましては、当事務所においては、実際に、造成業者に造成費を見積ってもらい、この造成費をもとに、鑑定評価額の算定及び純山林評価適用の可否の検討を行うこととなります。

<評価する土地が広大地に該当する場合>
<評価する土地が広大地に該当する場合>

<評価する土地が広大地に該当しない場合>
<評価する土地が広大地に該当しない場合>

 実務上の具体的な対応の仕方については、ケースバイケースで一元的に事を運ぶことは困難ですが、今までに当事務所で対応した中では、冒頭に述べたとおり、純山林評価、広大地評価よりも、鑑定評価による時価申告のほうが、課税当局の審査は厳しいような感覚をもっています。

 しかしながら、鑑定評価に基づいて申告することが、決して困難であるわけではありません。

 このほか、当事務所では、無道路地や事業決定された土地区画整理地内の更地等、この通達の定めによりがたい場合の評価として鑑定評価を採用して、時価申告を行ったケースが多数あります。

 なかなか、型にはまらない土地がありましたら、是非、ご相談下さい。






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