不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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対象地の前面に路地状開発がある広大地事例
2012年6月

いつも当レポートをご愛読頂きありがとうございます。
今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、当事務所が更正の請求をした結果、広大地として是認されました、対象地の前面に路地状開発がある広大地事例をご紹介したいと思います。『公共公益的施設用地(道路)の負担の要否』


 事実事項から確認しますと、評価対象地は、最寄駅から約450m(徒歩6分)に存し、現況は月極駐車場として利用されている地積約550平方メートルの土地でした。当該地域は以前より都心のベッドタウンでしたが、新線の開通に伴い、その線路沿いに新たな商業施設等も建設され、よりベッドタウンとしての成熟を増している地域です。駅前及び近隣の幹線道路沿いには分譲マンションも複数認められましたが、いずれも容積率300%以上の地域に存するものであり(評価対象地は200%)、また評価対象地の敷地面積からも明らかに『分譲マンション適地』とまでは言えず、相続時点現在の市況では、周辺の利用状況から評価対象地の最有効使用は『戸建分譲用地』であると判断されました。

 【図1:路地状開発の想定】
【図1:路地状開発の想定】 本件で問題となったのが、評価対象地の形状です。

 当該土地は、上記の通り、間口が約20mとやや狭いものの、奥行も約28mと短い形状であるため、公共公益的施設用地(開発道路)の設置を要するか否かが最大の争点となりました。

 当事務所で相談を受け、確認してみたところでも、確かに、左記【図1】のような旗竿状の敷地で区画割できる可能性がありました。

 また、評価対象地の道路を挟んだ真向いでも、路地状開発が行われていました(左記【図2】)。

 【図2:評価対象地と前面路地状開発地の位置】

【図2:評価対象地と前面路地状開発地の位置】 平成16年6月29日付けの『「財産評価基本通達の一部改正について」通達のあらましについて(情報)』(資産評価企画官情報第2号)より、『広大地に該当しないもの』の例示の一つとして、「公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地」が挙げられていますが、評価対象地において、路地状開発により戸建分譲を行うことが合理的であるか否かの判断は、裁決事例等により以下の4点によるもの思われます。

(1)路地状開発によって、標準的な地積の宅地に分割できること
(2)路地状開発が、都市計画法等の法令に反していないこと
(3)路地状開発後もすべての宅地を有効に利用できること
(4)周辺地域において路地状開発が一般的に行われていること

 周辺地域では、評価対象地の前面にも存するほか、複数の路地状開発地が認められたため、当該地域は路地状開発が一般的に行われている地域と判断されました((4))。そこで@の標準的な宅地の地積について、役所及び周囲の戸建分譲事例を調査してみたところ、当該地域は、近年新線が開通したことで、宅地化がより進んだことに伴い、相続時点現在の市況では、概ね80平方メートル前後程度の小さな画地規模で分割する傾向がある地域と判断されました。

 尚、評価対象地の前面に存する路地状開発地について調査をしたところ、当該地は新線が開通する数年前に分割が行われた土地で、画地規模もそれぞれ100平方メートル以上から分割されていたことがわかりました。また、当該地は評価対象地よりも奥行が短いため路地状開発を行ったものと思料されましたが、新線の開通後に戸建分譲された事例の内、評価対象地と同程度の奥行の土地で開発道路を設置している事例が複数確認できました。

 【図3:開発想定図】

【図3:開発想定図】 そこで、当事務所では評価対象地において路地状開発を想定した場合、前記【図1】の通り、当該地域における標準的な画地規模(80平方メートル程度)で区画割することが困難であり、この画地規模から区画割するには開発道路の設置が必要であると考え、その結果、税務上の広大地に該当すると判断しました。そして、報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、このほど是認されました。

 広大地評価の要件の内、『公共公益的施設用地(道路)の負担の要否』については特に課税庁側との見解の相違が多く起こるケースと言えます。周辺に路地状開発地が存していたとしても、近年の市況や売買事例を細かく調査し、課税庁側に上手く説明できれば、広大地として認められるケースも出てくるのです。

 尚、今回の広大地事例については、本年の当事務所広大地セミナーにおいてもより詳しくご紹介しておりますので、ご興味が有れば是非ご参加ください。【最新情報は当事務所HPよりご確認ください】


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