不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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平成24年の「地価公示」について(2)
2012年5月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、前回に引き続き「地価公示」について、近年見られる傾向と広大地判定に当たっての留意点についてご紹介したいと思います。


 地価公示とは、国土交通省が毎年1回全国の標準地について不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、一定の基準日(1月1日)における正常価格を公表するものです。これは、都道府県知事が行う都道府県地価調査(毎年7月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。


 さて、前回のレポートでは、平成24年の地価公示の結果と総評をお伝えいたしましたが、本レポートでは地価公示に近年見られる傾向と、広大地の判定に当たっての留意点についてお伝えいたします。

 過去にもお伝えしております通り、税務上の広大地に該当するためには、(1)標準的画地に比して著しく地積が大きいこと、(2)戸建分譲素地が最有効使用であること、(3)戸建住宅地として開発するに当たり、開発道路等の『公共公益的施設用地』の負担を要すること、の三要件を満たす必要があります。この場合の、(2)戸建分譲素地が最有効使用であることの判断に当たっては、周辺の地価公示標準地(及び地価調査基準地)の用途を考慮の上、行うことが有用です。

 地価公示においては、その標準地の用途は住宅地(例.川口−○)、商業地(例.川口5−○)、工業地(例.川口9−○)等に大別され、住宅地においては従来、戸建住宅として利用されているポイントがほとんどでした。しかし、近年住宅地のポイントの中に利用現況が「共同住宅」であるものが複数設定されています(表1参照)。

〈表1〉
標準地番号 所在及び地番 地積
(平方メートル)
利用現況、
構造
用途地域
(建蔽率、容積率)
交通施設、
距離
川口−20
(2012年設定)
埼玉県川口市幸町1丁目14番1 1,807 共同住宅
SRC14F
商業
(80%、400%)
川口、
850m
浦和−11
(2011年設定)
埼玉県さいたま市浦和区東岸町21番1 3,722 共同住宅
RC7FB1
一住居
(60%、200%)
南浦和、
600m
世田谷−26
(2011年設定)
東京都世田谷区用賀3丁目511番12 2,566 共同住宅
RC8FB1
一中専
(60%、200%)
用賀、
650m
横浜西−8
(2012年設定)
神奈川県横浜市西区岡野2丁目17番9 944 共同住宅
RC6F
一住居
(60%、200%)
平沼橋、
750m
船橋−60
(2012年設定)
千葉県船橋市山野町116番1 2,054 共同住宅
RC7F
一住居
(60%、200%)
西船橋、
500m

 標準地の利用状況は、通常、近隣の不動産の標準的な利用方法を示すものであり、面積の大きい相続対象地の近隣に上記のようなマンション利用の標準地が存する場合には、当該相続対象地は「マンション適地」に該当するため広大地には当たらないと課税庁側から主張されてしまう恐れがあります。

 表の「川口−20」のように用途地域が商業地域で、かつ容積率も400%であるような地域であれば、その周辺の利用状況から明らかにマンション適地等と判断され、広大地の適用を見送ることが通常と考えます。しかし例えば表1の「浦和−11」は第一種住居地域に存する指定建蔽率60%、指定容積率200%の土地であり、周辺の利用状況は以下の図1のようになっています。

      〈図1〉
〈図1〉

 図1を見ると分かるとおり、「浦和−11」の周辺においては一般住宅と共同住宅が混在しており、当該標準地の存在を知らないと「戸建分譲素地が最有効使用である」ものとして、広大地評価をしてしまう可能性も考えられます。

 しかしながら、当該標準地の存在により、この周辺の土地についての広大地適用のリスクは高いと言わざるを得ません。

 相続対象地の周辺の標準地については、国土交通省のHP等で誰でも調べることができます。今回は標準地がマンション利用の場合のリスクについてお伝えしましたが、もちろん相続対象地の周辺に工場地の標準地がある場合や、同一路線沿いに商業地の標準地がある場合についても広大地適用のリスクは高まります。

 ただし、マンション用地や工業地、商業地の標準地が相続対象地の近隣に存する場合であっても、当該標準地の利用が、明らかに広大地判定における「その地域」の特性と異なる旨の主張ができる場合等にあっては、説明の仕方如何では広大地の適用が認められる可能性もあります。

 上記判断に迷われた際には、お気軽に当事務所までご相談ください。






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