2012年4月
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今回は、3月22日に発表になりました平成24年の「地価公示」についてご紹介したいと思います。 |
地価公示とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、国土交通省が毎年1回全国の標準地(平成24年は全国26,000地点、うち原子力災害対策特別措置法により設定された警戒区域内の17地点は調査を休止)について不動産鑑定士等の鑑定評価を求め、これを審査・調整し、一定の基準日(1月1日)における正常価格を公表するものです。これは、都道府県知事が行う都道府県地価調査(毎年7月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。
平成24年1月1日時点の地価公示によると、三大都市圏においては、住宅地・商業地ともに地価の下落率が前年より縮小しています。全地域における傾向としては、平成22年の地価の下落率をピークに下落率が縮小していることから、徐々にではあるものの、地価の回復の兆しが見られる結果となりました。
また、半年ごとの地価変動率に目を向けると、東日本大震災のあった平成23年前半(1〜6月)に下落率が拡大し、平成23年後半(7〜12月)に下落率が縮小している傾向が見られ、大震災の影響により、不動産市場は一時的に停滞したものの、被災地を除けば、比較的早期に回復に向かっていると言えます。
私たちの住む東京圏について見てみると、住宅地は平均で△1.6%、商業地は平均で△1.9%の下落となり、ほぼすべての地点で下落となりましたが、半年ごとに見た場合、年前半は他の圏域に比べ下落率が拡大したものの、年後半は他の地域を上回る回復を示しました。以下、住宅地・商業地を見ていきたいと思います。
地域別
変動率表
(単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成22年 |
平成23年 |
平成24年 |
平成22年 |
平成23年 |
平成24年 |
全国 |
△4.2 |
△2.7 |
△2.3 |
△6.1 |
△3.8 |
△3.1 |
三大都市圏 |
△4.5 |
△1.8 |
△1.3 |
△7.1 |
△2.5 |
△1.6 |
東京圏 |
△4.9 |
△1.7 |
△1.6 |
△7.3 |
△2.5 |
△1.9 |
東京都 |
△6.2 |
△1.6 |
△1.0 |
△9.1 |
△2.8 |
△1.9 |
埼玉県 |
△5.1 |
△2.3 |
△2.3 |
△6.5 |
△2.6 |
△2.5 |
神奈川県 |
△3.4 |
△1.3 |
△1.2 |
△4.5 |
△1.7 |
△1.1 |
千葉県 |
△4.6 |
△1.8 |
△2.2 |
△5.1 |
△2.0 |
△2.2 |
半年毎の
地域別変動率表 (単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成24年(H23.1.1〜H24.1.1) |
平成24年(H23.1.1〜H24.1.1) |
前半 |
後半 |
前半 |
後半 |
全国 |
△1.3 |
△0.9 |
△1.8 |
△1.2 |
首都圏 |
△1.0 |
△0.5 |
△1.4 |
△0.6 |
≪住宅地≫
東京23区では、住宅ローン減税政策等により戸建住宅、マンションともに需要は堅調でした。東日本大震災により、湾岸部のマンション需要は一時的に落ち込みましたが、夏以降は回復傾向を示しています。ただし、円高や欧州債務危機等から景気動向に懸念があり、マンションの高額物件(地域によって異なるが約8千万〜1億円以上)については需要が弱くなっています。
また、大震災により被害のあった地域の下落率は大きく、特に液状化の被害のあった千葉県浦安市では△7.5%(前年1.1%上昇)の下落、千葉県美浜区では△7.3%(前年△0.8%)の下落となりました。
≪商業地≫
東京23区では、下落率は縮小したものの下落基調が継続しています。オフィスでは、全体的な傾向として大震災、円高、欧州債務危機等により賃貸需要の低迷が見られますが、地域毎で二極化が鮮明になっています。オフィスの業務機能の集約ニーズにより、立地条件が良く、高スペックビルが多く立地する業務高度商業地域(丸の内、大手町など)への需要が堅調で、こうした地域では地価は横ばい傾向に移行しつつある一方、これらの地域の周辺は旧耐震ビルや低スペックのビルが多く、空室率の高止まりと賃料の下落が見られ、地価の下落傾向が続いています。
また、外周区では商業地をマンション素地として利用する動きも見られ、地価の下落は緩やかになっています。
以上、東日本大震災からは立ち直りつつあるものの、欧州の債務危機等の影響から、依然として景気の先行きは不透明であり、地価も下落率は縮小しているものの上昇には転じていない地域が大半を占めています。このような状況下においては、好況時にマンション素地と成り得る土地であっても、相続時点においては事業リスクの高いマンション開発事業は敬遠され、戸建分譲素地であると判断されるケースも考えられます。
相続対象地の近隣にマンションが多く建ち並んでいるような場合であっても、当該マンションが好況時に建築されている場合等には、広大地の要件を満たす可能性も考えられます。
判断に迷われた際には、お気軽に当事務所にご相談ください。
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