不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

市街化調整区域内の宅地の評価
2012年1月

新年明けましておめでとうございます。
年も改まり、先生方も大変お忙しいことと存じますが、本年も当事務所レポートをご愛読くださいますよう宜しくお願い致します。
今回は、市街化調整区域内の宅地の評価についてお話したいと思います。



昭和44年以降、登記簿地目は同じ
幹線道路沿いや市街化区域との境界付近に存する地域は除く

 市街化調整区域内に存する宅地の評価方法は、その土地の固定資産税評価額に、国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて評価することは皆さんも御存じだと思います。

 それでは、市街化調整区域内に存する以下の2つの土地の評価額は同じでいいのでしょうか?

 既存宅地制度の廃止以降、都市計画法改正により市街化区域に隣接・近接等する土地の区域の内、都道府県等公共団体(開発許可権を有する者)が条例で区域を定め、この区域においては周辺環境の保全上支障がある用途に該当しない建築物等を目的とする開発行為及び建築行為を許可対象に追加することとしています(都市計画法34条11号)。この区域内では、地目に関わらず、開発行為等が可能となります。

 但し、この区域を定めていない自治体もありますし、区域を定めていても区域外に存する宅地も多くあるため、評価対象地の固定資産課税地目が「宅地」であったとしても本当に建物の建築が可能かどうかは役所での調査が必要です。

 因みに、埼玉県さいたま市では都市計画法34条11号の区域指定はされておらず、建築物の建築が可能なのは、以下の(1)かつ(2)の要件を満たす土地であると定めています(一部抜粋)

(1) 次のいずれかに該当するものであること
 概ね50以上の建築物のそれぞれの敷地が原則50m以内の間隔で連続して存する地域内にあること
 申請地を中心に半径500m圏内に概ね100以上の建築物の敷地が存する地域内にあること
(2) 次のいずれかに該当するものであること
 法に基づく許可等(開発許可等)を受け20年を経過したものであること
 線引前から土地登記簿謄本における地目が宅地であること

 前記(イ)、(ロ)がさいたま市内の市街化調整区域に存していた場合には、(イ)は建物の建築が可能であると思われますが、(ロ)は土地登記簿地目が雑種地であることから建物の建築は不可となる可能性があります。

 つまり、(ロ)の土地は、外形上建物の建築が可能である「宅地」と相違なく見えるため、一般の宅地と同様に評価しがちですが、建築不可であることを考慮した評価をすべきです。

市街化調整区域の雑種地の評価における概要表

 そこで、平成16年7月5日付の「資産評価企画官情報 第3号」に規定する「市街化調整区域内の雑種地の評価」では、上図のように家屋の建築が全くできない場合として一律に50%を「しんしゃく割合」として評価するのが相当であるとされています。

 尚、当該「しんしゃく割合」については、財産評価基本通達27−5(区分地上権に『準ずる地役権の評価』)を踏まえて定められています。よって、本件評価対象地(ロ)においても建築不可であることの当該しんしゃく割合50%を適用して評価する ことが妥当と判断されます。

 (イ)評価額:10,000千円  × 1.0倍 = 10,000千円

 (ロ)評価額:10,000千円 × (1−50%) × 1.0倍 = 5,000千円

 但し、これらの減価をするのは、固定資産税評価額が建物の建築が不可であることを考慮されていない場合の前提です。

 自治体の中には、建築不可であることを斟酌して既に低く評価されている場合には、当該固定資産税評価額をそのまま使用して評価すると不合理な結果が生じることとなります。上記の場合には、評価対象地が宅地の利用価値の低下がなかったものと仮定して算定した固定資産税評価額を基礎として評価することとなります。


 当事務所では、相続税土地評価等のアドバイスも行っております。上記のように、一見通常の宅地のように見えても、実は評価減することができる場合もあります。もし判断に迷われるような案件がございましたらお気軽にご相談ください。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所