不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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公共公益的施設(開発道路)の設置
2011年10月

いつも当レポートを御愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、広大地評価した事例を元に、公共公益的施設(開発道路)の設置についてお話したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は最寄駅からは約800m(徒歩約10分)に存し、被相続人及び相続人の自宅として利用されている全体地積約1,000平方メートルの土地でした。

図.1 当事務所で現地調査及び役所調査を行ったところ、対象不動産を利用するにあたっては南東側の幅員約6.5mの市道(建築基準法42条1項1号)を利用していますが、公図及び現況を確認すると、対象不動産の東側に接する形で墓地を利用するための赤道があり、北側にも一部建築基準法外である道路が約1m接しているのが確認できました。

 分譲マンションに関しては、対象不動産周辺では相続時点から過去5年内に建設された事例がほとんど存在せず、仮に建設を考えたとしても、1,500平方メートル程度からの大規模地でないと分譲マンション業者の用地取得条件に合わないとのことでした。従って、対象不動産は敷地規模や形状的に、分譲マンション適地とは言えないと判断しました。

 一方、戸建分譲事例は多数見つかり、ほとんどの事例が開発行為における最低敷地面積の100平方メートルで区画割りされていることが分かりました。従って、この地域の標準的画地は100平方メートルであり、最有効使用は戸建分譲素地であると判断しました。

 これらのことから、広大地の3つの適用要件
 (1) その地域における標準的な宅地の地積に比して、著しく広大な宅地であること
 (2) 戸建分譲業者が買い主であると思われる土地であること(マンション業者、一体利用を前提とする買い主の場合は除く)
は満たされたことになります。では最後の一つ
 (3) 開発行為を行うとした場合に、公共公益的施設(開発道路)の負担が必要と認められること
を考えなければなりません。

 今回の場合、まず東側と北側の道路は接道義務を満たしていないため、対象不動産は南東側の市道のみに接している土地と考えなければなりません。すなわち、南東側からのみ道路を設置することができることになります。すると、基本的には対象不動産の敷地内のみで考えるのが通常ですから、袋路状道路の設置が考えられるかと思います。しかし、対象不動産の存する市の開発指導要綱では、袋路状道路を設ける場合、開発区域の面積が1,000平方メートル未満でないと設けてはならないとの規定から、対象不動産では袋路状道路での開発は不可能だということが分かりました。

図.2 従って、対象不動産で開発道路を設置する場合、必ず通り抜け型の道路を設置しなければならないため、必然的にどこかを買収想定しなければなりません。そこで当事務所では、北側に約1m接している市道を利用し、左記図2の様に開発道路を設置しました。ここで注意しなければならないのが北側の市道が一部建築基準法外道路になっていることです。当該道路部分が建築基準法上の道路と認められない限り、この開発道路は通り抜け道路として扱われないため、当該道路部分を新設道路の一部として開発区域に含み、拡幅を行う必要があります。

 また、東側の赤道は、道路を拡幅しただけでは建築基準法上の道路とは認められないため、このようなケースでは、当該既存道路(建築基準法外)を新設の開発道路に編入するような形で戸建分譲を計画することが合理的だと考えられます。これは、市の同意を得て、無償で既存道路を開発道路に編入した方が、分譲する宅地部分の面積も大きくなり、戸建分譲業者にとって合理的であるためです。この場合、当該赤道部分を開発道路用地として開発区域内に含めて開発行為を行い、完了後に、当該赤道部分を含んだ新設道路部分が市に移管されてはじめて建築基準法上の道路となります。

 上記のことを考慮した上で100〜120平方メートル程度で区画割りすると、全ての画地がこの地域における規模及び総額としての価格水準を満たしており、早期の売却が期待できると考えられるため、この点から見ても合理的・経済的な区画割であると言えます。

 また今回は、対象不動産と接する形で墓地が存するため、標準的な画地と比べて、実際の取引価格に周辺環境が劣るという影響が考えられます。すなわち、このような個別的要因により、対象不動産の価額は近隣の標準的な宅地の価額と比べて著しく低くならざるを得ないため、特に図2の6画地(120平方メートル)分においては、心理的減価・環境減価が及ぶものとして10%の減価を考慮して評価することが妥当であると判断しました。


 当事務所では、広大地の証明に限らず、相続税土地評価における評価単位等のアドバイスも行っております。お電話のほか、FAX、E メールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。






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