不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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平成23年度の都道府県地価調査
2011年9月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、9月21日に発表になりました平成23年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。


 「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成23年は全国22,460地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県及び福島県においては86地点で調査が休止されました。

 平成23年7月1日時点の都道府県地価調査によると、平成22年7月以降の1年間の平均の地価変動率は、各用途・各圏域で約3%〜5%の下落となり、前回(約3%〜5%)と下落率はほぼ横ばいでした。

 三大都市圏では、住宅地、商業地とも昨年に続き下落率が減少しました。住宅地においては、住環境が良好で交通利便性の高い住宅地の需要が底堅いことや、昨年からの低金利や住宅ローン減税等の施策等の効果から下落率の縮小傾向を示す地域が多くありましたが、震災以後はやや弱い動きとなっています。

 商業地においては、空室率の高止まり・賃料下落や、震災後の売上減少等もあり下落を示しているものの、都心部ではオフィスの賃料調整が進み、コスト削減目的の事務所再編のための移転や災害時の対応性の高いビルへの移転等の動きにより空室率が改善したエリアがみられ、これらのエリアにおいては下落率が縮小しています。

 地方圏では、人口減少や中心市街地の衰退といった構造的な要因もあり、住宅地、商業地とも下落が継続していますが、九州新幹線の全線開業等の効果が見られる地域において地価上昇の動きが現れました。また、東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県及び福島県では全体的に地価が下落し、なかでも福島県では下落率がやや拡大しています。

【対前年平均変動率】
地価調査年
変動率期間
平成22年(前回)
H21.7.1〜H22.7.1
平成23年(今回)
H22.7.1〜H23.7.1
住宅地 全国 △3.4% △3.2%
三大都市圏 △2.9% △1.7%
地方圏 △3.6% △3.7%
商業地 全国 △4.6% △4.0%
三大都市圏 △4.2% △2.2%
地方圏 △4.8% △4.8%
全用途平均 全国 △3.7% △3.5%
三大都市圏 △3.2% △2.2%
地方圏 △3.9% △4.0%


≪住宅地≫
 東京都区部は、平均で△1.3%と前回の△3.1%よりも下落幅が縮小し、横ばい地点が増加しました。特に都心部では、前回下落幅が二桁から一桁に大きく縮小した千代田区、港区、渋谷区等で引き続き値頃感等から住宅地需要の回復が見られ、下落幅がさらに縮小しました。東京都全体でも中央区を除き下落幅が縮小しましたが、なかでも震災後液状化現象が起こった東京湾岸エリアに代わり、注目を集め始めた武蔵野エリアの下落幅が大幅に縮小しました。立川市は前回の△5.1%から△1.2%に縮小し、三鷹市では△2.8%から△0.5%に下落幅が縮小しました。多摩地域でも下落幅の大幅な縮小が見られました。埼玉県は、平均で△2.7%と前回の△3.4%よりも下落幅は縮小し、入間市を除き全ての市町村で下落幅が縮小しました。都心に近い県南部の住宅地は値頃感から需要が回復していますが、県北東部では依然高い下落率となっています。千葉県も、平均で△2.6%と前回の△2.9%よりも下落幅は微減しましたが、震災による被害が大きかった市町村においては下落幅が拡大しました。なかでも浦安市では前回の△1.9%から△7.1%に下落幅が大幅に拡大し、千葉市美浜区でも下落幅が倍増しました。千葉県全域は、相続税の土地評価上、「震災後を基準とした価額」により計算することになりますので、ご注意ください(沖田オフィスレポート2011年7月参照)。 神奈川県は、平均で△1.4%と前回の△2.0%よりも下落幅は縮小しました。

≪商業地≫
 東京圏は、平均で△2.3%と前回の△4.1%よりも下落幅が縮小し、上昇地点が僅かに見られ、横ばい地点は増加しました。東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県はいずれも、平均で3年連続下落となり、東京都区部は、平均で△2.6%と前回の△5.5%よりも下落幅は縮小しました。なかでも墨田区は東京スカイツリーの建設に伴い、将来性の期待による潜在的需要が強い地点で横ばいである等、前回の△3.8%から△1.7%に下落幅が大幅に縮小しました。多摩地域は、平均で△1.6%と前回の△3.6%よりも下落幅は縮小しました。埼玉県は、平均で△3.2%と前回の△4.0%よりも下落幅は縮小しました。千葉県は、平均で△2.5%と前回の△3.4%よりも下落幅は縮小しました。神奈川県は、平均で△1.6%と前回の△2.6%よりも下落幅は縮小しました。圏域縁辺部では、交通利便性の低い地域や商店街等の集客力が相対的に減退していることを背景に引き続き下落しています。


 以上、前回の地価調査に比べ、住宅地、商業地のいずれも下落幅が縮小傾向になっておりますが、最近の円高等の影響により、景気の先行きは不透明で、不動産市場も潜在的な弱材料は依然、解消されておりません。また、東日本大震災の影響が依然として大きく残っています。ただし、首都圏、特に都心部では一部のマンション業者等は積極的に用地買収に動いているようです。震災の影響で、液状化の被害があった湾岸エリアへの引き合いは以前に比べて減少し、逆に内陸の地盤が強固なエリアはこれまでより引き合いが強くなる傾向にあり、広大地適用要件の1つである「戸建分譲素地が最有効使用であること」の判断にあたって、リーマン・ショック後から現在までにおいて、マンション業者が手をださなかった土地であり、税務上の広大地の適用が可能な土地であっても、今後の相続時点においては、十分にマンション業者の需要が見込まれるような事象が生じてくるものと思われますので、その判断には十分ご注意下さい。






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