不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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固定資産の交換特例制度利用における不動産鑑定評価の活用
2011年8月

今回は固定資産の交換特例制度の利用に当たって、不動産鑑定評価の活用が有用となる場合があることについて、お話させていただきます。


  まず、今回のテーマである固定資産の交換の特例についておさらいさせていただきます。

 固定資産の交換の特例とは、「個人が、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例」であり、この特例を受けるための適用要件として以下のものが定められています。

 (1)  交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
 不動産業者などが販売のために所有している土地などの資産(棚卸資産)は、特例の対象になりません。

 (2)  交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
 この場合、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれます。

 (3)  交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。

 (4)  交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のため に取得したものでないこと。

 (5)  交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。この用途については、次のように区分されます。
交換譲渡資産の種類とその用途区分の表
交換譲渡資産の種類 区分
土地 宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他
建物 居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他用

 (6)  交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること。

 なお、この特例が受けられる場合でも、交換に伴って相手方から金銭などの交換差金を受け取ったときは、その交換差金が所得税の課税対象になります。

 当該適用要件のうち、(1)〜(5)については、要件を充足するか否かについて、疑義の生ずる余地は少なく、あまり問題とはなりません。しかし、(6)交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること、という要件については、「時価」がいくらなのかという問題が生じます。

 そこで、交換前に不動産鑑定評価により、交換資産の時価を把握しておくことが有用になります。具体的には不動産鑑定評価を行うことにより、以下のようなメリットがあると考えられます。

○税務署に対する交換の妥当性の立証

 交換資産のいずれか高い方の100分の20を超えないことの判断を誤ると、特例の適用要件を満たさず、税務署から否認されるリスクがあります。特に、親族間・法人とその役員間、同族会社の法人と代表者個人間の交換の場合等には税務上厳しくチェックされる傾向があるため、鑑定評価の必要性が高まります。

○節税

 所得税・法人税における時価は、路線価評価額ではなく、いわゆる売買時価を前提としています。相続税の申告における路線価評価額が必ずしも不動産の売買時価水準を反映しないことは、過去のレポートでもお伝えしてきた通りですが、仮に交換資産の路線価評価額の金額差がいずれか高い方の100分の20の枠内に収まらない場合でも鑑定評価を行うことにより、求めた時価が100分の20以内に収まり、特例が認められるケースがあります。結果としてかなりの節税効果が得られることとなります。

○公平な交換

 不動産の鑑定評価を行い、交換資産の適正な時価を把握することで、当事者にとってより公平な交換が行えるようになります。特に、交換資産が大規模画地や不整形地等価値の把握が難しい物件である場合には、鑑定評価を行い、適正な時価水準で交換を行うことが、当事者の利益を守る意味でも有用となります。

○将来の相続対策

 相続人間の共有地について、各相続人が単独で利用処分できるように、土地の共有持分を固定資産の交換の特例を用いて移し、単独所有としておくことが有効となる場合があります。この場合も、夫婦間や親子間・親族間といった特別な利害関係者間での交換となるため、不動産鑑定評価により適正な時価水準での等価交換であることを、税務署に対して証明しておくことが有効となります(なお、他の例として、取得費加算の適用の為に鑑定評価を適用したケースを、オフィスレポートVol.16に実際の事例を用いて詳しく紹介していますので、そちらも是非ご覧ください)。


 今回は、固定資産の交換特例にスポットを当ててお話させていただきましたが、例えば同族間・同族会社間の売買等における、低額譲渡でないことの証明等においても、同様に不動産鑑定評価を活用することが有用となる場合があります。判断に迷われた際には、ぜひお気軽にご相談ください。






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