不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

震災特例法を含めた路線価の動向
2011年7月

去る7月1日、平成23年分の相続税及び贈与税の課税における土地等の評価額の基準となる路線価等(以下、路線価)が全国の国税局・税務署で一斉に公開されました。そこで今回は、路線価の動向について、震災特例法も含めてご紹介したいと思います。


 ご存知の通り、路線価は、毎年1月1日を評価時点として、地価公示価格、売買実例価額、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として算定した価格の80%により評価されています。

 平成23年分の宅地に係る全標準地(約36万地点)の標準宅地の変動率は、前年比3.0%減となりました。当レポートでも毎年路線価についてお伝えしておりますが、これで3年連続の下落となります。しかし、下落はしているものの、多くの都道府県で下落幅が縮小(前年の全国の下落率は4.6%)しており、全国的な下落基調からは少しずつですが回復してきています。

 ちなみに、国税庁は今年から路線価の変動率の計算方式を変更しており、従来の路線価の平均額(加重平均)を基に計算する方式から、各評価地点の対前年変動率を単純平均するという方式を採用しています。したがって前年以降と単純比較ができないために今年の基準地点の平均価格は公表されておりません。(下記平成22年度の変動率は、計算方式が変更された後再計算されたものです。)

地域別変動率
(単位:%)
全  国 東京圏 東京都 千葉県 埼玉県 神奈川県
平成22年 ▲4.6 ▲5.4 ▲7.0 ▲4.5 ▲5.2 ▲3.6
平成23年 ▲3.0 ▲1.9 ▲2.0 ▲1.9 ▲2.4 ▲1.4

 東京圏域における変動率は上記の通りとなっております。どの都道府県でも価格の下落は続いておりますが、全国的にみると前年より下落率は縮小されています。下落率が小さかった都道府県は、愛知県(0.7%)、神奈川県(1.4%)、静岡県・沖縄県(1.6%)で、逆に下落幅が大きかったのは、高知県(7.8%)、徳島県(7.5%)、青森県(5.9%)などです。ちなみに、東京圏における住宅地の標準地で今年最も上昇した地点は、東京都中央区の「明石町5−19」で、公示価格1,100,000円、変動率は4.8%の上昇となっております。

 今年の特徴としては、前年は首都圏の下落幅が大きかったのに対し、地方の下落幅が大きくなっている点です。これは大都市圏でのマンション販売の回復や、住宅ローン減税などによる効果が表れているのではないかと考えられます。政府が7月13日に発表した月例経済報告にも、首都圏のマンション総販売戸数は、このところ持ち直しの動きがみられるという旨の発表がありました。景気に関しても、「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きがみられる。」と発表されております。路線価の変動率のみで景気判断はできませんが、皆さんの実感としてはいかがでしょうか。

 東日本大震災といえば、皆さんも既に国税庁のホームページ等でご覧になった方もいらっしゃるとは思いますが、平成23年4月27日に被災者の負担の軽減を図るため、「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律震災特例法」が施行されました。内容としては、財務大臣の指定する地域(指定地域)内にある特定土地を相続等により取得した場合は特例が受けられるというものです。国税庁からは次のように発表されています。

●相続税

 平成22年5月11日から平成23年3月10日までの間に相続又は遺贈により取得した特定土地等(平成23年3月11日において所有していたものに限ります。)の価額は、その取得の時の時価によらず、「震災後を基準とした価額」によることができます。

●贈与税

 平成22年1月1日から平成23年3月10日までの間に贈与により取得した特定土地等(平成23年3月11日において所有していたものに限ります。)の価額は、その取得の時の時価によらず、「震災後を基準とした価額」によることができます。

 計算例・・・100,000円(路線価) × 0.80※(調整率) = 80,000円
 ※ 計算例の為の仮の数値です。

 「震災後を基準とした価額」は、平成23年度の路線価に「調整率」を乗じて計算されることとなっており、この「調整率」は10月〜11月頃に国税庁から発表される予定となっております。そのため、現段階では「震災後を基準とした価額」を基にした申告を行うことはできません。したがって、この特例が受けられる場合、相続税、贈与税共に平成24年1月11日まで申告期限の延長が認められます。その期限の延長が認められる「財務大臣が指定する地域内」は7月20日現在では次の通りです。

 青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉の全域と、埼玉県加須市(旧北川辺町及び旧大利根町の区域に限る)、埼玉県久喜市、新潟県十日町市、新潟県中魚沼郡津南町、長野県下水内郡栄村

 つまり、上記地域内の特定土地を平成22年5月11日から平成23年3月10日までの間に相続または贈与した場合は、申告期限の延長が認められるということになります。また、納税地による期限延長も認められており、青森、岩手、宮城、福島、茨城の地域に納税地を有している人や、上記以外の地域に納税地を有する方であっても、震災により申告等ができない場合には申請により申告・納付等の期限の延長が認められています。これらの震災に関する情報は日々更新されているので、まだご覧になっていない方は、定期的に国税庁のホームページを御覧になることをお勧めします。(詳細は対象の税務署にお問い合わせください)






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所