不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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広大地評価の最有効使用の判定に影響を与える高度地区
2011年6月

いつもご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、広大地評価を検討するに当たり、最有効使用の判定に影響を与える「高度地区」について、ご紹介したいと思います。


 当事務所主催セミナーでも申し上げているとおり、税務上の広大地に該当するための要件の一つとして「戸建分譲素地が最有効使用であること」があげられますが、その判定に当たり、しばしば問題となるのが、評価対象地の典型的な需要者が、分譲マンション業者なのか、戸建分譲業者なのかという点です。

 いずれの需要者も、エンドユーザーの売行きに影響を与える環境条件や交通接近条件等に着目し、販売戸数に影響を与える公法上の規制や形状、規模等の画地条件について厳しく吟味した上で、投資採算性に基づいて取引の意思決定を行います。

 公法上の規制の中で、建築物の大きさ(高さ)に影響を与える要因として、皆様方に特に馴染み深いのは「容積率」であると思われますが、実際には「道路斜線」や「隣地斜線」等、様々な制限を考慮した上で、建築物を想定しなければなりません。今回取り上げる「高度地区」もその一つに数えられます。

 「高度地区」制度は、用途地域内に市街地の環境を良好に維持するため、または土地利用の増進を図るため、各都市の実情に応じ建築物の高さの「最高限度」もしくは「最低限度」に係る制限を設け、建築行為を的確に規制・誘導することで、用途地域で要求する水準以上の市街地環境の確保を図ろうとするものですが、広大地の判定において特に影響があるのは、建築物の高さの「最高限度」に係る制限です。その方法としては、(1)「斜線制限による方式」と(2)「絶対高さを制限する方式」があげられます。

 まず、(1)「斜線制限による方式」については、当事務所で扱った広大地の事例をご紹介します。

 評価対象地は、東京23区内の市街化区域内に位置し、用途地域は第一種中高層住居専用地域で、基準容積率は200%、高度地区は「第二種高度地区」(【図2】(1)参照)に指定されていました。評価対象地の地積は830平方メートル程度とやや小さめであったものの、周辺には分譲マンションも複数見られたため、当該事例の規模から考えれば、マンション建設が全く不可能とは言えず、評価対象地についても、高度利用の可能性次第では、いわゆる「マンション適地」となる可能性も残りました。

 そこで、当事務所では、評価対象地の画地条件、行政的条件において、最大限建設可能な階層のマンションを想定しました。

【図1】
【図1】 結果は左記【図1】のとおり、実際に建設可能な階層は最大でも3階程度(高さ10m以下にすると日影規制も計算しなくても済む)とすることが合理的と考えられました。すなわち、評価対象地の容積率200%と「高度地区」による斜線制限等を総合的に考えた場合には、現実的に評価対象地上には、投資採算が得られるほどの高度利用を図った中高層マンションを建設することは困難であるため、最有効使用は区画割りを前提とした戸建分譲素地であると判断し、広大地調査報告書を作成しました。

 これとは別に、近年、「高度地区」は地盤面からの高さの限度を水平に定めて制限する(2)絶対高さを制限する方式が増えつつあります。この動きは、近年の相次ぐ建築規制の緩和(とりわけ「天空率方式」の導入)に伴い、マンション等の建築物高層化の動きが著しく、各地で建築紛争が頻発している状況を踏まえ、自治体の側から、事前に高さのルールを明示しておく必要性が高まってきたことに起因します。

 例えば、東京都の江戸川区では、地域によって、第一種から第三種までの「高度地区」が指定されており、種別ごとに真北方向の隣地境界線、または道路の反対側の境界線からの斜線による高さの制限が定められていますが、第二種高度地区には、「第二種高度地区」(下記【図2】(1)の方式)と「第二種高度地区(絶対高さ16m)」(同(2)の方式)の2種類があります。

【図2】
【図2】

 仮に、(1)の方式の「高度地区」に指定された地域において、マンションを想定する場合には、例えば南側にある程度の奥行を確保した長方形地などでは、8階建であろうが10階建であろうが、他の制限(容積率、日影規制等)を満たす限りにおいて、何階建の建物でも建築が可能ということになりますが、(2)の方式の「高度地区」に指定された地域では、敷地の形状に関らず、最高でも5階建程度(1階当たり3mで計算)の建物しか建築できません。

 広大地の適用をするに当たっては、このように各自治体の規定する制限を事前に調査した上で、単に敷地規模や容積率にとどまらず、実際にどの位のボリュームの建築物が建築可能かを想定し、最終的な判断をする必要性が高まっています。


 不動産評価を専門とする当事務所では、不動産鑑定士、税理士のほか、建築士も複数在籍し、万全の体制で先生方の広大地評価をサポートする準備がございます。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。






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