不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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広大地評価後の土地売却時・売却後の注意点
2011年5月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、広大地評価した土地を相続税の納税等の為に売却する際及び売却した後の注意点について、ご説明したいと思います。


 広大地として申告する(した)土地を納税のため為等で一体として売却する際の注意点としましては、

 (1)分譲マンションや店舗の敷地等の一体利用を前提する業者には売却しない
 (2)旗竿上での分譲プランを立てている戸建分譲業者には売却しない

ということです。

 先生方もお気づきの通り、(1)は広大地の適用要件の1つとしてとして挙げられている「戸建分譲素地が最有効使用であること」、(2)は「戸建分譲地として開発に当たり、開発道路等の公共公益的施設用地の負担を要すること」と矛盾が生じるためです。


 単に売却価格のみに着目すれば、一般的に下記のアからウの順に低くなります。

 ア.分譲マンションや店舗等として一体利用する場合の価格
 イ.戸建て分譲業者が旗竿上で区画割りする場合の価格
 ウ.戸建て分譲業者が開発道路を設けて区画割りする場合の価格

 広大地として申告した土地の一部を売却する場合や相続時点から数年後に売却した場合等、全てのケースが上記の条件に当てはまるとは限りませんが、納税の為に売却するのであれば、『どうせ売るなら高く買ってくれる所(今回の例で言えば、アの分譲マンションや店舗等として一体利用することを目的とする業者)に売りたい』というのが納税者の心情です。

 しかし、当該土地上に分譲マンションや店舗等が建築されている場合には、税務調査の際に、広大地が否認されてしまうリスクも伴うため、広大地として申告する以上は、当該土地を相続人が売却する際の売却相手、売却後の利用状況等まで確認しておくべきです。

 次に、売却した後の注意点についてです。

 広大地として申告した土地を売却後、戸建分譲業者等が開発を行う際に、地中からコンクリート及びプラスチックガラ等の廃棄物(以下、「廃棄物」といいます)が出てくることがあります。この廃棄物の撤去には相当の費用がかかりますが、この費用は誰が負担するのでしょうか。

 土地の売買契約書の約款には売主の瑕疵担保責任という条項があることが一般的です。

 瑕疵担保責任とは、売買の対象物に隠れた瑕疵(外部から容易に発見できない欠陥)がある場合、売主が買主に対してその責任を負うということです。隠れた瑕疵があった場合、買主は、売主に対して契約解除や損害賠償の請求を主張することができます。買主が業者の場合、契約の解除や損害賠償の請求まではいかないまでも、廃棄物の撤去費用は売主である相続人が負担して引き渡すことが条件となります。

 一方、相続税評価において、廃棄物埋設地についての評価についての明文規定はないものの、性質について考えてみれば、地中に隠れたる瑕疵という意味において土壌汚染との共通点が認められます。土壌汚染については、「土壌汚染対策法(平成15年2月15日)」施行に伴って、平成16年7月5日付けで『土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)』(資産評価企画官情報第3号)において、下記の算式によって評価するものとされています。

土壌汚染地
の評価額
汚染がないもの
とした場合の
評価額
浄化・改善
費用に相当
する金額※
使用収益制限に
よる減価に相当
する金額
心理的要因に
よる減価に相当
する金額

「浄化・改善費用」については、汚染がないものとした場合の評価額(土地評価額)が地価公示価格レベルの80%相当水準額(相続税評価額)となる事との均衡から、控除すべき浄化・改善費用に相当する金額についても見積もり額の80%相当額とするのが相当とされます。

 廃棄物が埋設されている土地の相続税評価額は、上記の土壌汚染地の評価方法に準じて、地下に埋設された廃棄物がないものとした場合の評価額から廃棄物の除去に要した費用についても見積もり額の80%相当額を浄化・改善費用として評価することが可能であると考えられます。

 控除できる「浄化・改善費用に相当する金額」は、課税時期に確定していない場合は見積額であり、浄化・改善費用の額が確定している場合は、課税時期に未払いとなっている額に限り控除できます(浄化・改善のための助成金等の額は控除の対象となりません)。

 よって、広大地として申告する土地に廃棄物が埋設されていれば、広大地としての評価額から廃棄物の除去費用の見積額の80%を控除することが可能ですが、廃棄物が埋設されている可能性はあるものの、実際に廃棄物が埋設されているかどうか不確実な場合や、どの範囲まで埋設されているかどうかが不明な場合などは、控除に際し慎重を期す必要があります。廃棄物や土壌汚染地についての判断に迷われる案件がございましたらお気軽にご相談ください。






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