不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

マンション適地であっても広大地が適用できるケースとは?
2011年4月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、面積規模はマンション適地としての基準も満たしている場合であっても、形状が著しく悪く、建築条例等との関連において、マンションの建築ができず、広大地が適用できる可能性があるケースをご紹介したいと思います。


 まず、おさらいですが、税務上の広大地の適用要件は

 (1)標準的画地に比して著しく地積が大きいこと
 (2)戸建分譲素地が最有効使用であること
 (3) 戸建分譲地として開発に当たり、開発道路等の公共公益的施設用地の負担を要すること

があげられます。

 このうち、(2)の判定にあたって、対象不動産がマンション適地なのか、戸建分譲素地であるのかの判断が必要となることが多いです。一般的には、マンション適地の基準は、スケールメリットを活かし、品等の良い建物を建設するために、戸建分譲素地よりも大きくなる傾向が顕著です。ただし、規模からみて、マンション適地としての基準をみたしている場合であっても、その形状と建築条例や開発指導要綱等との関連において、マンションの建設ができず、戸建分譲素地と判定され、税務上の広大地評価の適用が可能となる場合があります。

 以下、例をあげてご説明いたします。まず、左の図のような土地が東京都内で容積率200%の地域にあったとします。今回は、市場分析の結果、1,500平方メートル程度であれば、マンション適地と成り得る地域に属しているものと判断される場合です。

 まず、東京都内で建物を建築する場合には、東京都建築安全条例(以下「建築条例」)に沿うようにしなければ、いけません。建築条例によれば、9条において共同住宅、すなわち、マンションは、特殊建築物に規定されています。

第九条 この章の規定は、次に掲げる用途に供する特殊建築物に適用する。
一 学校、博物館、美術館又は図書館
 共同住宅、寄宿舎又は下宿(以下「共同住宅等」という。)
以下、省略

 そして、特殊建築物については、建築条例10条において、路地状敷地の制限として以下のように規定されています。

第十条 特殊建築物は、路地状部分のみによつて道路に接する敷地に建築してはならない。ただし、次に掲げる建築物については、この限りでない。
 路地状部分の幅員が十メートル以上で、かつ、敷地面積が千平方メートル未満である建築物
 前条第六号又は第十三号に掲げる用途に供する建築物で、その敷地の路地状部分の幅員が四メートル以上で、かつ、路地状部分の長さが二十メートル以下であるもの
 前二号に掲げるもののほか、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める建築物

 「10条1号」の規定には、例示の土地は該当せず、また、共同住宅は「9(前)条2号」に掲げる用途に供する建築物(10条2号の緩和規定があるのは9条6号又は9条13号に掲げる用途に供する建築物)であることから、「10条2号」の緩和規定の適用は受けれません。「10条3号」については明確な具体例はありませんが、ここでいう「安全上支障がない場合」とは、例えば、耐火建築物又は準耐火建築物であり、2階建又は3階建程度で、かつ、小規模のもので、路地状部分が幅員6m以上あり、路地状部分に連絡する幅員4m程度の空地が建築物の周囲に確保されている場合や、その他、小規模な木造共同住宅等についても、その敷地及び配置等の状況により、安全上支障ないものと認められる場合等と考えられるが、その計画について総合的な判断により認められるものであり、いずれにしても、例示した土地に基準容積率を享受できるような分譲マンションの建設するための建築許可が降りる可能性は極めて低く、仮に、10条の規定をクリアしたとしても、以下に掲げる「東京都建築安全条例10条の3」により、高度利用は不可能となります。

第十条の三 特殊建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路(前条の規定の適用を受ける特殊建築物の敷地にあつては、同条の規定により接しなければならない道路)に接しなければならない。ただし、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合は、この限りでない。
特殊建築物の用途に供する部分の床面積の合計 長さ
五百平方メートル以下のもの 四メートル
五百平方メートルを超え、千平方メートル以下のもの 六メートル
千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの 八メートル
二千平方メートルを超えるもの 十メートル

 「10条の3」によれば、例示の土地の間口は6.0mですから、現況を所与とした場合、ボリュームが1,000平方メートル以下(1,000平方メートル÷1,650平方メートル=60.606060・・・・・%)の建物しか建築できないこととなります。

 例示の土地は地積1,650平方メートルですから、容積率を完全消化した場合、延床面積3,300平方メートル(1,650平方メートル×200%)の建物の建築が可能となりますが、その場合には、道路に10m接するように、買収等を行わなければならないこととなります(買収面積:(10−6)m×25m=100平方メートル)。ただし、この場合においても、結局のところ、例示の土地については、10条1号の規定には抵触することとなり、特殊建築物の建設が可能となる可能性は低いものと思われます。

一方、戸建分譲を前提とする場合、東京都の開発指導要綱によれば、道路延長約120mを超えるものであっても、新設道路(開発道路)の幅員は6mを確保すればよく、買収想定をしなくても、区画割が可能となることも考えられ、マンション分譲を想定するよりも、戸建分譲をするほうが、現実的であるものと考えられ、税務上の広大地の適用が可能となります。

 以上のように、都市計画法等の公法上規制のみならず、このような、建築条例等との関連も調査しなければ、広大地の適用漏れが生じてしまう場合があります。ご注意ください。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所