不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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標準的な宅地
2011年3月

この度の大災害では未だに大変な状況が続いておりますが、被災された方々には心からお見舞い申し上げると共に、一日も早い復興を切に願っております。
今回は、広大地評価上、問題となる「標準的な宅地」についてスポットを当てていきたいと思います。


 現行の財産評価基本通達24−4(広大地の評価)では、広大地に該当する要件の1つとして「その地域における標準的な宅地に比して、著しく地積が広大な宅地であること」を挙げています。

 つい、流し読みしてしまいそうな一文ですが、この一文だけでもI「その地域」とはどこからどこまでか、II「標準的な宅地」及びIII「著しく地積が広大」とはどの程度の規模か、を判断しなければならないことが分かります。今回は、この内のIIにクローズアップしていこうと思います。IIを判断する手がかりとして、国税庁の質疑応答事例に下記の記述(下線部分)が確認できます。

広大地の評価における「その地域」の判断

【照会要旨】
  広大地の評価において、「その地域における標準的な宅地の地積に比して…」と定めてい「その地域」とは、具体的にどの範囲をいうのでしょうか。
 また、「標準的な宅地の地積」はどのように判断するのでしょうか。

【回答要旨】
 広大地とは、「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの」をいいます。
 この場合の「その地域」とは、原則として、評価対象地周辺の

 (1)河川や山などの自然的状況
 (2) 土地の利用状況の連続性や地域の一体性を分断する道路、鉄道及び公園などの状況
 (3) 行政区域
 (4) 都市計画法による土地利用の規制等の公法上の規制など、土地利用上の利便性や利用形態 に影響を及ぼすもの

などを総合勘案し、利用状況、環境等が概ね同一と認められる、住宅、商業、工業など特定の用途に供されることを中心としたひとまとまりの地域を指すものをいいます。
 また、「標準的な宅地の地積」は、評価対象地の付近で状況の類似する地価公示の標準地又は都道府県地価調査の基準地の地積、評価対象地の付近の標準的使用に基づく宅地の平均的な地積などを総合勘案して判断します。
 なお、標準的使用とは、「その地域」で一般的な宅地の使用方法をいいます。

【関係法令通達】
 財産評価基本通達 24−4
 

 さて、上記下線部分にある「地価公示の標準地…(以下、「標準地等」という)」は、土地鑑定委員会が、国土交通省令で定めるところにより、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとするとされています。ということは、「標準地等」と同一地域内に存する宅地の評価であれば、「標準地等」を参考とすることで、何ら問題はないように考えられますが、果たしてその「標準地等」が、現在(相続時点)の市況下における「標準的な宅地の地積」の利用状況及び規模を反映しているかどうかについては、別途、検証する必要があります。

 というのも、「標準地等」は、地価の上昇や下落等の動向を観察する必要から、定点観測が求められている等の事情もあり、必ずしも現在の市況を反映しているとは限らないからです。

 例えば、当事務所が調査した事例で、東京都某市で最寄駅からの徒歩距離が15分を超え、農地が多く見られる住宅地域であるにもかかわらず「軽量鉄骨造2階建の共同住宅の敷地158平方メートル」が、標準地として選定されているものがありました。周辺は、100平方メートル程度の戸建分譲住宅用地の取引事例が多く確認できる地域であり、共同住宅の敷地としての取引価格を参考にしたい人はいないでしょう。

 また、住宅地図上で周辺の宅地の規模等を見て判断をするような場合にも、下記のような例が多くあることから、法令等にまで十分注意して見極めなくてはなりません。


 この他、役所で管理している近年の「開発登録簿」を閲覧し、近年の開発事例から標準的画地規模を読み取ることも有効です。特に首都圏では、開発の際に求められる最低敷地面積程度の地積に分割される傾向が強く認められます。このことは、戸建住宅が建ち並ぶ住宅地域において、100平方メートルが2,000万円で売られている宅地と、150平方メートルが2,900万円で売られている宅地があった場合に、どちらに早く買い手がつくかを想像していただけると分かりやすいかと思います(当然、前者になります)。

 このように、「標準的な宅地」を判断するだけでも一筋縄ではいかないのが広大地の判定です。 特に判断に迷われる場合は、当事務所までお気軽にご相談ください。






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