不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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開発許可を受けられない土地の広大地適用
2011年2月

今回は、広大地評価の3要件のうち、(3)について、開発許可を受けられない土地の広大地評価の適用についてご紹介します。


 当事務所主催セミナーでも申し上げているとおり、税務上の広大地に該当するためには、(1)標準的画地に比して著しく地積が大きいこと、(2)戸建分譲素地が最有効使用であること、(3)戸建住宅地として開発するに当たり、開発道路等の『公共公益的施設用地』の負担を要すること、の三要件を満たす必要があります。

 しかし、この三要件に該当するかどうかの判断の前に、対象地が、間口が狭い若しくは無道路地(建築基準法上の道路に接しない土地も含む)、前面道路の幅員が狭い(いわゆる2項道路)など、そもそも現況のままでは都市計画法による開発許可が受けられない土地に該当していることがあります。

 例えば、当事務所の所在する埼玉県川口市でも、開発における接続先道路(前面道路)や開発道路について、許可基準が設けられています。(以下、川口市開発許可基準のあらましより抜粋)

(1)接続先道路
 予定建築物等の用途及び開発区域の規模に応じて、次の表に掲げる認定幅員及び現況幅員を有する公道で、車両の通行に支障のない構造の道路(当該公道が他の公道に接続している場合には、接続する公道を含め、次の表の基準に適合すること。)でなければならない。
面積 0.3ha
(3,000平方メートル)未満
0.3ha以上〜20.0ha
(200,000平方メートル)未満
道路幅員 4.0m以上 6.5m以上

(2)開発道路等
 開発道路の幅員は、政令第25条第2号、第3号及び川口市開発許可基準に関する条例第4条の規定による。
  条例第4条に基づく 政令第25条第2号に基づく
面積 0.2ha(2,000平方メートル)未満 0.2ha以上〜0.3ha未満 0.3ha以上〜20.0ha
(200,000平方メートル)未満
道路幅員 4.0m以上 5.0m以上 6.0m以上

 上記の許可基準を見ると、例えば対象地の地積が3,000平方メートルの場合、開発許可を受けるには、前面道路の幅員が6.5m以上で、間口は最低でも約10m(開発道路の幅員6m+両側隅切り約4m)以上なければならず、それに満たないと開発許可が受けられないということになります。

 このような土地について、実際に戸建分譲業者が開発行為を行う場合には、開発許可基準を満たすため、隣接地又は必要な土地を買収することになります(当然ながら買収が困難なケースも有ります)。

 例えば、下の左図のように、現況のままでは開発許可を得られない土地については、隣接地の一部を買収若しくは道路提供する(同地が自己所有地である場合)ことが出来れば、その土地は開発許可を得られる条件を満たすことになります。



 各市町村に開発行為に関する条例や要綱があり、また自治体によっては非常に複雑な規定が定められていることがあるため、開発想定図面を作成する場合には、事前に綿密な役所調査を行う必要があります。

 戸建分譲について言えば、対象地の所在する自治体によっては、原則として開発道路の両側に設置が必要である隅切りがやむを得ず設置できない(実質的に隣地買収は難しいため)場合は片側だけの設置を可とする等の緩和規定や、開発道路を隣接地との境界沿いに設ける場合には(道路斜線を避けるため)幅25cmの空地を設置しなければならない等の細かい規定が定められていることもあります。

 このように、実際の戸建分譲業者の開発では、要綱や規定に則り、合法な開発行為を行う必要がありますが、税務上の評価では、現実の市場では買収が困難な土地についても、合理的な買収を想定することで、広大地を適用することが出来ます(他の要件を満たしていることが前提となります)。

 但し、この際の注意点として、単に最も近い路線への買収を想定するのではなく、対象地の周囲に住宅が建ち並んでいる等、買収を想定することがあまりに現実的でない場合には、駐車場や空地等、実際に開発をする場合に最も現実的な買収想定地を選ぶことも必要です。(広大地の最新実例2010年6月度「建築基準法外道路に接面する広大地」又は広大地評価レポート「広大地の正面路線について」も参考にして下さい。)

 役所調査や現地調査を綿密に行い、買収想定も含め、要綱に沿った開発想定図面を添付することで、広大地評価が認められる可能性も高まります。当事務所では、広大地の証明に限らず、相続税土地評価における考え方等のアドバイスも行っております。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。






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