不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

土地区画整理事業中の宅地評価
2011年1月

いつもご愛読頂きありがとうございます。今回は、土地区画整理事業中の宅地の評価について一般的な話を交えながら、不動産鑑定評価の立場から見た問題点についてお話したいと思います。


 先生方もよくご存じの通り、土地区画整理事業の施行地区内にある宅地については、以下の通り評価すべきことが、財産評価基本通達において定められています。


〈原則〉

 土地区画整理法第98条(仮換地の指定)の規定に基づき仮換地が指定されている場合には、その宅地の価額は、仮換地の価額に相当する価額によって評価します。

 ただし、その仮換地の造成工事が施行中で、当該工事が完了するまでの期間が1年を超えると見込まれる場合の仮換地の価額に相当する価額は、その仮換地について造成工事が完了したものとして、路線価方式又は倍率方式によって評価した価額の100分の95に相当する価額によって評価します。

 この場合において、換地処分により徴収又は交付されることとなる清算金のうち、課税時期において確実と見込まれるものがあるときには、その金額を評価上考慮して、徴収されるものは仮換地の価額から減算し、交付されるものは加算して評価します。


〈例外〉

 仮換地が指定されている場合であっても、(1)仮換地について使用又は収益を開始する日を別に定めるとされているため、当該仮換地について使用又は収益を開始することができず、(2)仮換地の造成工事が行われていない場合は、従前の宅地の価額により評価します。


 このように、財産評価基本通達では、区画整理事業施行中の宅地について、仮換地指定後は原則として仮換地として評価することになります。確かに、仮換地の使用収益が既に開始している場合には、実質的に仮換地の効用を享受し得る以上、仮換地として評価することは妥当と考えられます。

 また、評価対象不動産について仮換地の指定がなされていても、仮換地の使用収益が出来ない場合には、例外的に従前地としての価額をもって評価することが認められています。この点についても、仮換地の使用収益開始までの間は通常、従前地を利用することになるわけですから、従前地として評価することは妥当と考えられます。


 しかし、土地区画整理事業は全国各地で様々な形態で行われており、その特性も様々です。そのため、財産評価基本通達の規定に沿って、上記の評価を行うのみでは適正な評価ができない場合が出てきます。2つ程例を挙げて紹介します。


[仮換地指定後、対象地の一部に造成工事が行われたものの、仮換地の使用収益は開始されていない場合]

 財産評価基本通達によれば、この場合の評価は仮換地の価額となります。ただし、工事完了までの期間が1年を超えると見込まれる場合には、5%の減価が認められています。

 確かに、使用収益開始までの期間が1年から長くても2年程度までであれば5%の減価というのは概ね妥当な範囲であると思います。しかし、区画整理中の土地の中には、事業予算や所有者の立ち退き等様々な事情から、工事の進行が遅れているもの・中断しているもの等が多くあります。このような場合には、工事が完了し仮換地の使用収益が開始するまでに数年〜それ以上の期間が見込まれることがあります。5年後・10年後まで使用できない土地を使用収益ができることを前提とした時価の僅か5%減で買う人がいるかという観点から考えると、当規定にはやや問題があるように思います。


[仮換地指定後、対象地について使用収益・造成工事が行われておらず、かつ、従前地が更地である場合]

 財産評価基本通達によれば、この場合の評価は例外規定により従前地の価額となります。区画整理事業の認可の公告が行われた後においては、土地区画整理法第76条の規制により、事業施行の障害となる建物の建築等に当たって知事等の許可が必要となります(なお、土地区画整理事業の都市計画決定が行われていても、事業認可の公告前であれば76条の規制はかかりません)。従前地上に建物が存する場合には、再建築等に係る制限はあるものの、当該建物の利用が可能であり、これを路線価評価してもあまり問題は生じません。しかし、評価対象地が駐車場等の更地である場合には、当該土地に知事等の許可を受けて建物を建築することは困難となります。そうすると、建物が建てられない土地について、通常の建物利用が可能な土地と同様の路線価で評価することになり、評価額が過大になってしまう恐れがあります。


 以上、土地区画整理事業の施行地区内の宅地の評価の問題点についてお話ししましたが、このような問題が生じるのは対象地を「従前地」又は「仮換地」の価額で一律に評価することに起因します。区画整理中の土地は、従前地から換地へ向かう過渡期的な土地であり、これを従前地か仮換地のどちらか一方の価額で評価するのは簡便であるものの、やや乱暴ともいえます。なお、不動産鑑定評価では、例えば仮換地指定後・使用収益開始前の土地であれば、仮換地の経済価値、使用収益開始までの間仮換地を利用できないことによる減価、使用収益開始まで従前地を使用できる場合には当該従前地の経済価値等を総合的に踏まえた上で、実務上、評価額を決定します。

 このように、当該評価規定についてはやや問題が多いことから上記の例以外にも評価額が過大となるケースは多く考えられます。場合によっては鑑定評価額等による時価申告を行うことが有利になる可能性もあるのではないかと当事務所では考えます。先生方におかれましても区画整理中の土地の評価を行う場合には評価額の妥当性を今一度ご確認なされることをお薦めいたします。判断に迷われた際には、ぜひお気軽にご相談ください。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所