不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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首都圏外のミニ分譲地の広大地評価
2010年12月

いつもご愛読頂きありがとうございます。今回は、税理士先生より相談を受け、当事務所が首都圏外の地方都市において、初めて更正の請求にてミニ分譲地の広大地評価を適用し、是認された事例をご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は東海地方の某県内で、最寄駅から約1,250m(徒歩16分)に存し、敷地上には被相続人所有の2階建賃貸アパートが建つ、地積約945平方メートルの土地です。当市は県内の中枢都市のベッドタウンとなっている地方都市で、再開発を了した駅前には分譲マンションも複数認められましたが、最寄駅から徒歩15分以上を要する評価対象地の近隣には分譲マンションは見受けられず、敷地面積からも『分譲マンション適地』に該当しないことは明らかであり、相続時点現在の市況では、こうした周辺の利用状況からも評価対象地の最有効使用は『戸建分譲用地』であると判断されました。

所在地 ○○県●●市 用途地域 一中高
指定容積率150%
最寄駅へ
の距離
約1,250m
(約16分)
地目
利用区分
宅地
貸家建付地
地積 945
平方メートル
標準画地 130〜165
平方メートル
標準的
使用
一般住宅の
敷地
相続時点 平成21年

 三大都市圏外となる当市においては、敷地面積が1,000平方メートル以上の場合に開発許可が必要となります。開発許可を要する面積未満であっても、ミニ開発分譲素地が広大地に該当するかどうかは、平成16年の広大地情報・3「通達改正の概要」には「(2)広大地の範囲(広大地に該当する条件の例示)「ミニ開発分譲が多い地域に存する土地については、開発許可を要する面積基準(例えば、三大都市圏500平方メートル)に満たない場合であっても、広大地に該当する場合があることに留意する」旨が規定されています(「オフィスレポートVol.14」参照)。

 評価対象地の地積は、当市の開発許可面積基準である1,000平方メートルに満たないことから、当初は広大地評価をすることは見送られましたが、当事務所で周辺の市場を調査・分析した結果、対象地の周辺は開発区域が1,000平方メートル未満となるミニ開発分譲が確認出来る地域であることが判明したため、開発図面を作成し、更正の請求をしました。

 この市においては、敷地面積が1,000平方メートル以上の場合は、開発指導要綱により最低敷地面積が165平方メートル以上とすることとされています。ところが、開発許可面積(1,000平方メートル)未満でミニ開発分譲の対象となる場合には、最低敷地面積の規定がないことから、130〜150平方メートル程度の敷地規模で分割されていることが分かりました。

 そこで当事務所では、「典型的な需要者である戸建分譲業者(首都圏では主に建売分譲業者)は、建売住宅を販売する場合、利潤を最大化するため、土地・建物の総額を考慮して、できるだけ画地を小さくし、分譲戸数を多くするように事業計画を行う傾向にあり、これらを考慮すれば、戸建分譲業者が開発分譲を行う際の各画地の敷地面積の最低限度を標準的画地の有力な判定基準とするべきである」旨を主張し、実際に戸建分譲事例を調査し、敷地規模が1,000平方メートル以上の場合は165平方メートル、1,000平方メートル未満の場合は130平方メートル程度からなるべく小さな画地規模で分割する傾向がある地域であると主張し、165平方メートル未満の画地規模で分割した、下記のような図面を作成しました。

 本件評価対象地は、奥行に比べて間口が狭く、この程度の間口幅では旗竿状の敷地で合理的に分割することは難しく、また、周辺では旗竿状の敷地で開発分譲をすることがほとんど見受けられない地域であったため、敷地内に道路を設置せずに区画割をすることは現実的ではありませんでした。

 首都圏内ではミニ開発分譲地が多く見受けられる市町村については、広大地の適用が可能な場合も多くあり、当事務所でも、東京都・神奈川県・千葉県内で複数の是認事例がありますが(但し、埼玉県内では、多数のミニ分譲事例【埼玉県では開発許可面積は500平方メートル以上】が確認出来るにもかかわらず、当事務所の扱った案件では是認された事例はありません。もし是認された事例をお持ちの先生がいらっしゃいましたらご一報頂ければ幸いです)、首都圏外となる某県の地方都市でミニ開発分譲が認められるのかという点が、当事務所にとっても興味の対象でした。

 当事務所の調査では、この地域で、相続時点から過去10年以内に、12件のミニ分譲事例を確認することが出来ましたが、実際に、当事務所が埼玉県内で否認されたミニ分譲地の広大地は、より説得力のある相続時点の直近5年間の事例で30事例ほど確認できたにも関わらず、広大地を否認されていることから考えて、当該事例数をもってミニ分譲が多い地域であると言えるのかどうかは、判断が分かれるものと思われます。

 結果的には、本件は冒頭でご紹介したとおり、是認となり、調査分析の結果や、税務署への説得力次第では、地方都市でもミニ分譲地の広大地が認められる可能性が十分にあると確認できたケースとなりました。

 課税庁が広大地に当てはまる要件として公表している通達・情報等は、全国一律で発表されているため、個々の案件について担当官レベルで見解の相違が起こることも多く見られます。裏を返せば、広大地評価が適用可能な土地を通常の高い評価額で申告してしまっているケースも潜在的に多く存在しており、見解の相違さえ避けられれば、還付を受けられる可能性が大いにあるということです。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についての更正の請求のご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外のミニ分譲地の広大地案件についても対応しておりますので、判断に迷われました際にはお気軽にご連絡ください。






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