不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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市街地農地の広大地評価と生産緑地
2010年10月

 いつもご愛読頂き、ありがとうございます。
 今回は、広大な市街地農地の広大地評価と生産緑地についてご紹介したいと思います。


 広大な市街地農地の評価は、下記ア又はイのいずれか低い方の価額により評価するとされています。

  ア.広大地の評価の定めを準用して広大地補正率を適用して評価する方式
  イ.宅地比準方式又は倍率方式に基づいて評価する通常の評価方式

 一般的には、アの広大地による評価方式の方が低い評価額となるものと思われますが、宅地と同様に広大な市街地農地においても評価単位を誤ると税額に大きな影響が出るため、注意が必要となります。

 そこで、下図のような市街地農地を相続人の1人が相続した場合の評価単位を検討してみましょう。


 (1)の場合、一団の畑として利用されていることから、A地、B地、C地を一体とした2,000平方メートルを一つの評価単位として考えます。

 (2)の場合、全体が畑として利用されているように見えますが、B地は生産緑地に指定されていることからA地、B地、C地のそれぞれを別の評価単位として考えます。

 生産緑地とは・・・

 生産緑地とは、市街化区域内農地等のうち、公害または災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保などのために必要とされる土地で、500平方メートル以上の規模のものについて、その土地の所有者の同意を得て指定されることになっています。

 この生産緑地に指定されると、農地等以外への利用(例えば宅地への転用)は原則的にはできないこととなり、市街化区域内に存する農地等であっても相当の利用制限を受けることとなります。

 ※生産緑地の評価額=生産緑地でないものとした価額×(1−減額割合)


 生産緑地については、次に掲げる事由が発生した場合には、市区町村長に対して時価で買い取るべき旨の申出をすることができるものとされています。

  ア.その生産緑地に係る指定の告示の日から起算して30年を経過したとき
  イ. その生産緑地に係る指定の告示後にその生産緑地に係る農林漁業の主たる従事者が死亡(従事不可能な状況となるような一定の故障を含む)したとき

区 分 減 額 割 合
課税時期において市区町村長に対し買取りの申出をすることができない生産緑地
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間 割 合
5年以下のもの
5年を超え10年以下のもの
10年を超え15年以下のもの
15年を超え20年以下のもの
20年を超え25年以下のもの
25年を超え30年以下のもの
100分の10
100分の15
100分の20
100分の25
100分の30
100分の35
課税時期において市区町村長に対し買取りの申出が行われていたできない生産緑地又は買取りの申出をすることができる生産緑地 100分の5

 相続が発生したときには、原則として主たる従事者の死亡となりますので、市区町村長に買取りの申出をすることができます。したがって、通常減額割合は5%となります。(但し、農地の生前一括贈与を行い贈与税の納税猶予を受けている場合等は、主たる従事者が次世代に移っていることから、買取りの申出をすることができるまでの期間に応じて減額割合を適用することとなります。)

 よって、前述(2)のB地が広大地に該当した場合の評価額は

100千円×(0.6−0.05×800平方メートル/1,000平方メートル)×800平方メートル×(1−0.05)=42,560,000円となります。

 ここで注意すべき点としては、広大地としての通常の評価額に生産緑地の減額割合5%を乗じて評価できる点と市街地農地等を広大地として評価する場合には、広大地補正率の中に宅地造成費等を考慮してあることから、通達上の造成費については控除しないで評価することになる点です。

 広大な市街地農地等を評価する際に、前述(1)のように一体で評価する場合は、面積規模が大きくなることから、立地条件等によっては分譲マンション業者が購入する可能性も考えられます。周辺で同程度の敷地規模で分譲マンションが建築されているような場合には、広大地の適用には慎重を期す必要があります。

 このような「マンション適地」となる可能性が高いケースでは、相続人が複数で、かつ、遺産分割に障害がないという前提であれば、全体を1人の相続人が相続するよりも、各画地を別の相続人が相続する(本件ではB地を別の相続人とすればよい)ことで、結果として(2)のように評価単位が分かれ、全体には広大地の適用ができないまでも、部分的に(本件ではA地、B地)に広大地の適用が可能となることがあります。

 一見すると広大地には該当しないと思われるようなケースにおいても、分割のご提案次第では、広大地の適用が可能となることもございますので、判断に迷われました際には、当事務所までお気軽にご相談ください。






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