不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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2010年最新! 都道府県地価調査
2010年9月

 いつもご愛読頂き、ありがとうございます。
 今回は、9月21日に発表になりました平成22年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。


 「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成22年は全国22,701地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。


 平成22年7月1日時点の都道府県地価調査によると、平成21年7月以降の1年間の平均の地価変動率は、各用途・各圏域で約3%〜5%の下落となり、前回(約3%〜8%)に比べ、全体的に下落率が縮小しました。

 特に、三大都市圏では、住宅地、商業地とも下落率が半減しました。この理由としては、(1)前回の調査は世界的金融危機後で土地需要が大幅に減少した時点の調査であったが、今回の調査は景気が厳しい状況ながら持ち直しを見せている時点における調査であること、(2)住宅地においては、都市部で利便性、選好性(人気)が高く潜在的に需要の大きい地域で、マンションや戸建住宅地の値頃感の高まりや税制等の住宅関連施策の効果等から住宅地需要が回復した地域が現れたこと、(3)商業地においては、数年前に活発な不動産投資が行われた中心部において世界的金融危機以後オフィス空室率の上昇、賃料下落が続く厳しい市況に大きな変化は見られないものの、大都市の一部地域において金融環境の改善もあって収益用不動産の取得の動きが見られること等が挙げられます。

 一方、地方圏では、人口減少や中心市街地の衰退といった構造的な要因もあり、住宅地、商業地とも前回とほぼ同じ下落率を示しました。

【対前年平均変動率】
地価調査年
変動率期間
平成21年(前回)
H20.7.1〜H21.7.1
平成22年(今回)
H21.7.1〜H22.7.1
住宅地 全国 △4.0% △3.4%
三大都市圏 △5.6% △2.9%
地方圏 △3.4% △3.6%
商業地 全国 △5.9% △4.6%
三大都市圏 △8.2% △4.2%
地方圏 △4.9% △4.8%
全用途平均 全国 △4.4% △3.7%
三大都市圏 △6.1% △3.2%
地方圏 △3.8% △3.9%


≪住宅地≫

 東京都区部は、平均で△3.1%と前回の△10.6%よりも下落幅は縮小しました。特に都心部では、前回二桁の大きな下落を示した千代田区、中央区、港区、渋谷区等で、値頃感から住宅地需要の回復が見られ下落幅は一桁に縮小しました。東京都区部都心部における地価公示との共通地点の半期毎の地価動向を見ると、ほとんどの地点において下落幅が縮小し、横ばい地点が多く見られ、中央区及び港区では上昇地点も見られました。多摩地域は、平均で△3.5%と前回の△7.7%よりも下落幅が縮小し、都心から遠い西多摩地域の町村部では下落幅が拡大した地域も見られました。埼玉県は、平均で△3.4%と前回の△5.8%よりも下落幅は縮小し、全ての市町村で下落幅が縮小しました。都心に近い県南部の住宅地は値頃感から需要が回復しているが、県北東部では依然高い下落率となっています。千葉県は、平均で△2.9%と前回の△5.0%よりも下落幅は縮小し、一部を除きほとんどの市町村で下落幅が縮小しました。千葉市花見川区、市川市、八千代市では横ばい地点が見られました。神奈川県は、平均で△2.0%と前回の△5.4%よりも下落幅は縮小しました。特に川崎市では前回△7.6%から△1.3%に下落幅が大きく縮小し、中原区及び高津区でそれぞれ上昇地点が見られました。圏域縁辺部では、相対的に交通利便性の低い地域や人口減少により宅地需要が低迷している地域で下落幅が拡大しました。


≪商業地≫

 東京圏は、平均で△4.1%と前回の△8.9%よりも下落幅が縮小し、上昇、横ばい地点も僅かに見られました。東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県はいずれも、平均で2年連続下落となり、東京都区部は、平均で△5.5%と前回の△12.0%よりも下落幅は縮小しました。都心部では、昨年いずれも平均で二桁の下落となりましたが、今回は中央区を除き一桁の下落にとどまっています。地価公示との共通地点の半年毎の地価動向を見ると、都心部のほとんどの地点において後半は下落幅が縮小し、横ばい地点も見られました。多摩地域は、平均で△3.6%と前回の△7.6%よりも下落幅は縮小しました。埼玉県は、平均で△4.0%と前回の△7.1%よりも下落幅は縮小しました。千葉県は、平均で△3.4%と前回の△5.8%よりも下落幅は縮小しました。神奈川県は、平均で△2.6%と前回の△6.7%よりも下落幅は縮小しました。圏域縁辺部では、交通利便性の低い地域や商店街等の集客力が相対的に減退していることを背景に引き続き下落しています。


 以上、前回の地価公示に比べ、下落幅が縮小傾向になっておりますが、最近の円高等の影響により、景気の先行きは不透明で、不動産市場も潜在的な弱材料は依然、解消されておりません。ただし、一部のマンション業者等は積極的に用地買収に動いているようで、広大地適用要件の1つである「戸建分譲素地が最有効使用であること」の判断にあたって、リーマン・ショック後から現在までにおいて、マンション業者が手をださなかった土地であり、税務上の広大地の適用が可能な土地であっても、今後の相続時点においては、十分にマンション業者の需要が見込まれるような事象が生じてくるものと思われます。






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