不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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不動産鑑定評価による更正の請求案件
2010年8月

 いつもご愛読頂きありがとうございます。今回は、ご支援先の税理士の先生から、ご依頼頂き不動産鑑定評価による時価にて更正の請求を行った事案をご紹介いたします。


 この度、紹介いたします事案は、首都圏某市に存する間口狭小・奥行長大な面積約920平方メートルの長方形の土地です。

 本件対象不動産は、地域の標準的画地面積が120平方メートル程度であるのに比して規模が大きく、自己利用目的のエンドユーザーからの需要はなく、また最寄駅からは徒歩圏内にないため、マンション需要も見込めません。

 従って、典型的な需要者は戸建分譲業者となるものと考えられますが、対象不動産は奥行が深く旗竿上の開発は事実上不可能であることから、開発道路を入れて区画割りする必要があります。

 対象不動産について、該当市の開発行為審査基準に適合するように、合理的な区画割りを行うとすると、左記の図のようになります。

 図のように、対象地は間口が狭く奥行が長大であるため、開発道路を入れることによる潰地の割合が非常に大きくなり、その有効宅地化率は同程度の規模の開発事例に比してかなり劣ることとなります。

 また、区画割後の各画地の形状についても、奥行が短い画地や旗竿上の画地等不整形なものとなります。

 このようなケースでは、通常の路線価方式での評価における奥行価格補正率、奥行長大補正率等による補正のみでは、評価対象不動産の個性を適切に評価額に反映することはできず、適正な時価水準よりも高い評価額となってしまいます。

 また、本件対象不動産については、(1)規模が標準的な画地に比べて著しく大きく、(2)典型的な需要者が戸建分譲業者と想定され、(3)区画割りに際して開発道路を入れる必要性が認められることから、財産評価基本通達上の広大地の規定を適用して評価することも可能であると思われます。しかし、前述のように対象不動産については開発道路を入れることによる潰地の割合が非常に大きく、広大地の規定を適用するよりも不動産鑑定評価によったほうが評価額が下がるものと考えられます。つまり、広大地の規定を適用し、評価算式を当てはめた場合、路線価と比較して約45%の減価率となるのに対し、鑑定評価を行った場合の評価額は地域の標準的な画地の価格に比べて約64%の減価率となるため、路線価が公示価格水準等の8割程度に設定されていることを考慮したとしても鑑定評価を活用したほうが有利となるのです(ちなみに本件対象不動産ついて広大地の規定を適用した場合の評価額は約40,800千円、鑑定評価を行った場合の評価額は約36,500千円でした)。

 以上のような事情から、本件においては不動産鑑定評価による時価で更正の請求を行い、結果として、この更正の請求は認められました。

 本件事案が示すとおり、不動産、特に土地は個別性の強い資産であり、財産評価基本通達により画一的に評価するのみではその個別性を必ずしも反映しきれない場合があります。財産評価基本通達による評価の基礎となる路線価は評価上の安全性を考慮して低めに定められていますが、本件対象不動産のように、例外的なものについては、その適正な時価が財産評価基本通達に基づく評価額を下回ってしまうことがあるのです。

 先生方が過去に申告された案件で、原則的な路線価評価等による評価額が高いと感じたことはなかったでしょうか。例えば、本件のように画地の形状により利用効率の劣る土地のほか、著しい高低差のある土地で開発に際して多額の造成費がかかる場合面大の戸建分譲素地で旗竿状の分割が可能なため広大地には該当しないものの、分割後の画地が不整形になること等による市場性減価が大きい場合等、財産評価基本通達による画一的な基準では反映しきれない減価要因が存する不動産については、鑑定評価を活用することにより評価額を下げることが可能となる場合があります。

 当事務所では、鑑定評価だけでなく、税務上の取扱いも含めてアドバイスしておりますので、判断に迷われることがあれば、お気軽にご相談ください。






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