不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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幹線道路沿いの店舗の敷地
2010年6月

 今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、当事務所が更正の請求をした結果、広大地として是認されました「幹線道路沿いに存する店舗の敷地(貸宅地)」の事例をご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は、最寄駅から約1,600メートル(徒歩20分)に存し、現況、店舗の敷地として利用されている地積約2,700平方メートルの土地でした。当該店舗は、評価対象地の他に同族会社所有の敷地と合わせて一体利用されており、全体で約4,500平方メートル、建物は同族会社所有となっていました。

 まず、注意しなければならないのは、今般の評価単位です。2以上のものから隣接している土地を借りて、これを一体利用している場合には、その借主の借地権の評価に際しては、その全体を1画地の宅地として評価しますが、貸主の有する貸宅地の評価については、各貸主の所有する部分ごとに別の評価単位としてそれぞれ1画地の宅地として取り扱わなければなりません。つまり、今般の評価単位は、下記の通りとなります。



 評価対象地の周辺は分譲マンション、店舗、一般住宅等が混在する地域でしたが、最寄駅から徒歩20分という立地を考慮すると、相続時点現在の市況においては、分譲マンション業者の需要は弱く、「マンション適地」に該当する可能性は低かったため、本件で問題となったのは、地域の標準的使用が店舗なのか?あるいは戸建住宅なのか?という点でした。

 不動産鑑定評価基準によると、『標準的使用』とは地域の価格水準を形成している使用方法とあります。つまり、近隣地域における典型的な土地取引での買主の購入後の使用目的を前提に判断すべきなのです。この考え方を基準として今般の事例を見ていきましょう。


  県道を挟んで評価対象地の向かい側には飲食店舗が建築中でしたが、当該店舗を含め、主に自動車利用客を対象とする沿道サービス型の店舗は、評価対象地の東方を走る国道沿い(評価対象地は接面していない)に集中していました。実際に、相続税路線価の地区区分を確認してみると、国道沿いは『普通商業・併用住宅地区』に指定されているのに対して、県道沿いは『普通住宅地区』に指定されていました。

 ここで注意すべき点は、県道沿いにおいて店舗としての需要が見込まれる地域なのかどうかという点です。

 そこで、周辺地域において開発された事例の役所調査を行ったところ、県道沿いには店舗が散見されるものの、売買された事例は見受けられず、地主による有効活用として建築されたものであることが分かりました。

 さらに、詳しく調査してみると、県道沿いにおいて評価対象地から150メートル程度離れた位置に地積約650平方メートルと約1,200平方メートルの土地を戸建分譲業者が購入していました。この内、地積650平方メートルの戸建分譲予定地Bについては、後に周辺に位 置する国の施設の駐車場用地として一体で売買され、実際には戸建分譲されなかったものの、幹線道路である県道沿いにおいて、店舗として売買された事例が見受けられないのに対して、戸建分譲を目的とした事例が見受けられたことを勘案すると、地域の標準的な使用方法は戸建住宅ということが説明できます。

 以上、現地の利用状況・形状及び相続税路線価等から総合的に検討した結果、当事務所では評価対象地が税務上の広大地に該当すると判断し、報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、このほど是認されました。


 今般の事例においては、当事務所の主張が認められたものの、同様の事例で広大地が否認されたケースも多々見受けられます。特に、幹線道路沿いに存する店舗や倉庫・工場等の敷地として一体利用されている場合には、同一路線沿いの利用状況はもちろん、戸建分譲地として売買された事例があるかどうかが1つの重要なポイントとなります。周辺の利用状況や売買事例を細かく調査する能力があってこそ、広大地として認められるケースが出てくるのです。

 当事務所では、広大地の証明に限らず、相続税土地評価における考え方等のアドバイスも行っております。お電話のほか、FAX、Eメールでの相談も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。






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