不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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広大地の正面路線について
2010年5月

 今回は、ご支援先の税理士先生より相談を受け、当事務所が正面路線をどちらにとるべきかを検討し、広大地として評価した事例をご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、評価対象地は、東京都23区内で、最寄駅から約1km(徒歩13分)に存し、被相続人のご自宅の敷地として利用されている地積約540平方メートルの土地でした。周辺には分譲マンションも見られたものの、評価対象地の敷地規模は、分譲マンションの敷地としては小さく、また、指定容積率は200%であったものの、前面道路の幅員との関係から、基準容積率は160%に制限され、高度利用と呼べるほどの建物を建設することは困難であったため、周辺の利用状況や相続時点現在の市況から考えて、『分譲マンション適地』に該当せず、評価対象地の最有効使用は『戸建分譲用地』であると判断されました。

所在地 東京都●●区 用途地域 一住居
指定容積率200%
最寄駅へ
の距離
約1km
(約13分)
地目
利用区分
宅地
自用地(自宅の敷地)
面積 土地:約540平方メートル 標準画地 70〜80平方メートル
標準的
使用
一般住宅の
敷地
相続時点 平成21年

 この案件で問題となったのは、評価対象地の正面路線をどう考えるかという点でした。

 評価対象地は、下記の通り、幅員約1.8mの道路(区有通路)に接面しており、被相続人やこの道路に接面するアパートの住民は当該道路から出入りをしておりました。

 そこで、当事務所で現地調査及び役所調査を行ったところ、当該道路は建築基準法上の道路には該当しない(以下、法外道路)ため、この道路を接面道路として、建築物等の建築や開発許可は得られないことが分かりました。

 また、当該法外道路に路線価は付設されていないため、広大地の適用に当たっては、近隣の建築基準法上の道路までの買収を想定した上で、その道路に付設された路線価を採用することが合理的と考えられました。

 当事務所では、当初、評価対象地から距離的に最も近く、実際に出入りをしている法外道路が接続する南方の区道(幅員約5m、路線価235千円)を正面路線として広大地評価することが妥当であると考えていました。

 しかし、現地調査をして分かったことは、評価対象地が接面する法外道路際には、居宅及びアパートが境界線ぎりぎりまで迫る形で建てられており、実際にこの法外道路を拡幅するためには、当該家屋の一部を取り壊さなければならないため、この方面からの開発は非現実的ということでした

 一方で、評価対象地の東側は月極駐車場(空地)となっており、東方の区道(全幅約10m、路線価230千円)までの用地買収の可能性は比較的高いものと考えられました。

 ここでもう一つの注意点です。東方の区道は、全幅10mの道路として認定されていたものの、中央部には大きな段差(間知ブロックの擁壁)があり、実際には上部を走る主要路線部分と、下部(評価対象地側)を走る側道部分に分かれていたのです。

 そこで、区役所建築指導課にて確認してみたところ、当該道路は確かに認定上の路線としては全幅10mの区道であるものの、当該道路を接面道路として、建築物等の建築又は開発許可を得る際には、路線の下部の幅員4mを基準として容積率を算定してほしいということでした。

 この結果、評価対象地の指定容積率は200%であるものの、前面道路の幅員を4mとして算定された基準容積率は160%(4m×4/10)となります。

 本件では、たまたま敷地規模が約540平方メートルで、画地条件から見て、元々、分譲マンション適地となる可能性は低かったため、行政的条件(特に容積率)から大きな影響は受けませんでしたが、仮に対象地が2,000平方メートルや3,000平方メートルもある大規模地であったらどうでしょう。認定上は一つの路線でも容積率算定の際の幅員を4mとするか10mとするかで、全く別の回答が出る可能性があります

 当事務所では、このような調査の結果、東方の区道を前面道路と考え、空地部分を買収想定した上で、行止まり状の開発道路を設けて区画割する方法が戸建分譲業者にとって最も合理的であると判断しました。すなわち、東方の区道(路線価230千円)を正面路線として広大地評価することが妥当であるとして、上記の開発想定図面を添付した不動産調査報告書(広大地証明)を作成し、所轄税務署に提出したわけです

 先生方に相続税土地評価のセカンドオピニオンを求められ、確認して見ると、詳細な道路の調査をせずに、広大地の適用の可否を判断してしまっているケースが度々見受けられます。実際に現地を確認し、建築基準法上の道路としての取り扱いや建築物等を建築するに当たっての条件までを調査・確認した上で、開発想定図面の作成ができれば、広大地として認められる可能性が高まります。






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