不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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ホントは怖い「正面路線価」の採り方
2008年9月

 「道路」と関係の深い『正面路線価』の採り方について、実際の裁決事例(国税不服審判所沖縄事務所 平成17年7月1日裁決)を交え、「無道路地」の評価と併せてご紹介したいと思います。


 ご存知のとおり、路線価とは「国税局長が各路線ごとに評定した1平方メートル当たりの価額」をいいますが、路線価の付設は公道・私道に限らず、法律に規定されることを要件としていません。この結果、「不特定多数の者の通行の用に供されている道路」であれば、道路法や建築基準法に規定する道路に該当していなくても(以下、法定外道路)、路線価が付設されているケースが多数見受けられます。

 今回ご紹介する裁決事例の評価対象地は、出入に河川管理用の通路(以下、河川通路)のみが利用可能な土地です。当該河川通路は道路法や建築基準法上の道路には該当しませんが路線価が付設されています。

 先生方は『正面路線価』の採り方につき、どのように考えますでしょうか?


 一般的には、すぐ目の前の河川通路に、税務署により路線価が付設されているわけですから、それを使うのが正しいと考えがちです。裁決事例においても、納税者は河川通路に設定された低い路線価を『正面路線価』として主張しました。

 これに対し、税務署側は、「本件河川通路は建物を建築するための道路として利用することはできない旨申述していることから、本件河川通路に設定された路線価を『正面路線価』とするのは不適切なため、『正面路線価』は本件河川通路が接続する幹線道路に設定された路線価となる。」と主張しました。

 結局、審判所は「本件河川通路は河川区域に存し、河川の管理のための通路であって道路ではないことは明らかであることから、本件河川通路に設定された路線価を『正面路線価』とすることは相当ではない。したがって、評価対象地は幹線道路に設定された路線価を『正面路線価』として評価することが相当である。」とし、納税者の主張を退けました。つまり、本件では税務署側は自らが路線価を設定しておきながら、それを使うのは不適切だと主張し、審判所もこれを認めたことになります。

 この結果、評価対象地は、建築物を建築するために必要な道路に接すべき最小限の間口距離の要件(以下、接道義務)を満たしていない土地であるため、実質的に「無道路地」(接道義務を満たしていない土地については、建築物の建築に著しい制限を受ける等、その利用価値が低くなる)としての評価をすることになります。

 すなわち、『正面路線価』は幹線道路に設定された100千円を採用することになりますが、「無道路地」であるため、通路開設部分の買収費用を控除することができます。

 「無道路地」の価額は、原則として、実際に利用している路線に面する宅地と併せて評価した価額から、無道路地以外の宅地の価額に相当する価額を控除した価額を基とし、不整形地としての補正を行った後の価額から、その40%の範囲内で相当と認められる金額を控除して評価します。この場合の40%の範囲内において相当と認められる金額は、無道路地について「接道義務」に基づいて最小限の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額とされます。通路部分の価額は実際に利用している路線の路線価に、通路に相当する部分の地積を乗じた価額とし、奥行価格補正等の画地調整は行いません。


 今回紹介した裁決事例から注意していただきたいことは、評価対象地に接面する「道路」が法定外道路に該当する場合には『正面路線価』として認められないケースがあるということです。つまり、どの路線価を『正面路線価』として採用すればよいかをよく調査せずに、勝手に判断してしまうと、評価誤りに繋がることも有り得るということです。

 当事務所では、路線価が設定されている(1)認定外道路や(2)未舗装道路など、法定外道路に該当する可能性のある「道路」について、役所調査や現地調査を行うサポート業務を行っています。判断に迷われた先生方は何なりとご相談下さい。






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