不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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広大地判例の考え方
2007年7月

 審判例「関裁(諸)平16第10号、平成16年9月28日」についてご紹介したいと思います。


 事実事項から確認しますと、本件宅地は、最寄駅から約2.5km、第一種住居地域(建蔽率60%、容積率200%)に存し、幅員8mの公道に接面する約600平方メートル(間口・奥行より推定)の中間画地です。路線価は普通住宅地区となっています。標準的画地規模は約100平方メートルです。

 先生方は広大地評価の適用につき、どのように考えますでしょうか?

 前面道路の幅員が8mですから、容積率の観点からは200%(基準容積率)が確保され、分譲マンションの建設も可能と考えられます。しかし、最寄駅から約2.5km(徒歩約32分)という駅接近性の観点から考えると分譲マンション建設の可能性は除外して考えて良いでしょう。また、約600平方メートルという敷地規模は、個人が購入するには規模が大きく取引総額が嵩むことから、必然的に需要者は戸建分譲業者に限定されます。その結果、問題は、本件宅地を戸建分譲するに当たり、公共公益的施設用地(道路等の潰れ地)が必要か否かという点に絞られてきます。

 請求人らの主張する開発行為の方法と原処分庁の主張する開発行為の方法は、下図のとおりとなります。


 戸建分譲業者が区画割をするに当たり重要視することは、分譲総額が最も高くなるように区画割する(経済的合理的に区画割する)ということです。先生方にはどの図が正しく見えますでしょうか?

 私(筆者)などは、前頁のいずれの図でもなく、間口21.8mであれば、旗竿状で4区画に分譲、ないしは、ちょっと専門的ですが、1期当たりを500平方メートル未満に抑え、位置指定道路を入れて2期分譲することが合理的と考えるのですが…(下図参照)。いずれも考えられますが、仮に5区画に分譲できるのであれば(2)がやや有利でしょうか。


 それはさておき、審判所は1(1)の開発想定図を相当として広大地評価を適用することを認めました。幅員4mの通り抜け開発道路を本件宅地内に設ける方法です。結局、審判所は、明らかに潰れ地が生じない土地に該当する場合以外は、広大地評価を適用して評価することが相当と認めた(納税者勝訴)、もっと分かりやすく言えば、「両方が考えられる場合には広大地OK」という判断を下した訳です。

 但し、実務上、どのような土地が「両方が考えられる場合」に該当するかは慎重な判断が必要です。

 通常、上記のような例では、税務署側はまず潰れ地が生じないで開発することが合理的であると主張すると思われます。

〔裁決要旨〕
 原処分庁は、本件宅地は公共公益的施設用地の負担のない開発行為を行うことが経済的に最も合理的であるから、本件宅地を評価するにつき財産評価基本通達24−4(広大地評価)の定めを適用することはできない旨主張する。しかしながら、都市計画法に規定する開発許可を必要とする面積基準以上の土地については、周囲の状況等からみて明らかにマンション用地として適している土地等、開発行為を行うとした場合に明らかに潰れ地が生じない土地に該当する場合以外は、同通達24−4の定めを適用して評価することが相当と認められる。本件宅地について開発行為を行うとした場合には開発許可が必要であり、本件宅地は明らかに潰れ地が生じない土地には該当せず、また、請求人らの主張する開発行為の方法も相当であることから、本件宅地は同通達24−4の定めを適用して評価することが相当である。(平16.9.28 関裁(諸)平16−10)






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