7−2)死亡保障も欲しいが,将来の退職金財源も準備しておきたいと
     考えた場合
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2)死亡保障も欲しいが,将来の退職金財源も準備しておきたいと考えた場合

 経営者死亡時のリスク対策も必要だが,将来に向けて現在の経営者の退職金財源も確保しておきたいと考えたらどうだろうか? 先に挙げたようなケースよりは,恒常的な経費を将来のために多少増加させてもよいというようなケースである。

 これも同じく50歳男性,これまで取り上げてきた例である。死亡保障を確保しながらも退職金の財源も確保しておきたい,しかし退任時期は65歳以降だと推定されるが,それほど明確に決めていないというケースを想定してみよう。この場合,1/2損金タイプ逓増定期保険(表2の上から2段目)は,妥当とはいえない。

 つまり,死亡保障の確保はそれなりにできているが,経過20年段階では返戻金は返戻率で25%程度となってすでに相当減少してきており,仮に退任時期が70歳以降となった場合には退職金財源として利用できないからである。

 50歳の社長が,退任時期は具体的にはまったく不透明で,例えば65歳から75歳の間で退任と想定し,そのための準備をしておこうということであれば,解約の際の返戻金が長期にわたって高い水準で維持されるような保険が妥当ということになる。つまり,50歳の例でいえば,経過期間15年から25年程度の間に返戻金がそれなりに高い水準のものということである。

 その観点からは,この1/2損金タイプ逓増定期保険として挙げた表2上から2段目の例は妥当とはいえないことになる。

表2
    1年 5年 10年 15年 20年 25年
長期平準定期
(98歳満了)
保険金額 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000
保険料累計 2,557,000 12,785,000 25,570,000 38,355,000 51,140,000 63,925,000
返戻金 1,340,000 7,640,000 15,700,000 23,830,000 45,370,000 56,040,000
返戻率 52.4% 59.8% 61.4% 62.1% 88.7% 87.7%
逓増定期
1/2損金
(*1)
保険金額 1億円 1億円 1億円 5億円 5億円
保険料 5,331,900 5,331,900 5,331,900 5,331,900 5,331,900
保険料累計 5,331,900 26,659,500 53,319,000 79,978,500 106,638,000
返戻金 0 15,210,000 53,570,000 61,200,000 27,150,000
返戻率 0 57.1% 100.47% 76.52% 25.45%
逓増定期
1/3損金
(*2)
保険金額 1億円 1億円 2.856億円 5億円 5億円 5億円
保険料 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900 14,192,900
保険料累計 14,192,900 70,964,500 141,929,000 212,893,500 283,858,000 354,822,500
返戻金 11.430.000 69,320,000 144,570,000 196.810.000 236,140,000 255,700,000
返戻率 80.5% 97.6% 101.8% 92.4% 83.1% 72.0%
逓増定期
1/4損金
(*3)
保険金額 1億円 1億円 1.464億円 2.358億円 3.797億円 5億円
保険料 12,299,800 12,299,800 12,299,800 12,299,800 12,299,800 12,299,800
保険料累計 12,299,800 61,499,000 122,998,000 184,497,000 245,996,000 307,495,000
返戻金 9,940,000 59,710,000 127,090,000 197,060,000 261,200,000 288,260,000
返戻率 80.8% 97.0% 103.3% 106.8% 106.1% 93.7%

 このようなケースでは,ここで挙げた期間中の返戻金が比較的高く維持され退職金財源として確保しておきたいという観点で,表2最上段の長期平準定期保険(長期平準定期保険は上表では15年経過で返戻率が62%と低いが,翌年16年経過では88.8%と跳ね上がる。これは低解約返戻タイプのため,低解約返戻期間が15年まで続くためである)と表2最下段の1/4損金タイプの逓増定期保険が妥当と考えられる。

 1/4損金タイプの逓増定期保険であれば,返戻率が下がってきたとはいえ,表2のケースでは経過25年段階で依然として返戻率は93.7%水準にあり,それまでの死亡保障のコストを考えても十分な水準にあるといえる。

 それでは,長期平準定期保険と,1/4損金タイプの逓増定期保険のどちらが妥当なのだろうか?

 利用する企業としては,「保険料が比較的安いもの」,「損金算入割合が大きいもの」,「損金算入額が小さくても,さらに保険料が高くても,とにかく返戻率が高いもの」などの視点から,自身の企業の状況に合わせて選択することになる。それぞれの企業のコスト管理上の問題,税務面での検討などにより判断する必要があるといえよう。

 なお仮に,経営者の退任時期が60歳と決まっているのであれば,1/2損金タイプの逓増定期保険あるいは1/3損金タイプの逓増定期保険が妥当な保険ということになろう。つまりターゲットとする時期に返戻金が多く積み上がっているからである。後は保険料や,解約の際に多くの利益を出し,退職金支払いの損金処理に耐えられる利益を確保する必要があるかどうかなど,先にみた総合的な視点でどれを選ぶか判断することになる。

 次章では含み益の確保の観点など,その他の観点から保険の評価を取り上げる。



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