2)逓増定期保険―1/4損金,3/4資産計上のケース
逓増定期保険のうち,「保険期間満了時の被保険者の年齢が80歳超かつ加入年齢+(保険期間×2)が120歳超」に該当するケースが,保険料の税務として,契約から6割期間が,1/4損金,3/4資産計上となるものである(保険期間の全期間にわたって保険料を支払う全期払いの場合)。
逓増定期保険の最後にこのケースを具体的にみていこう。50歳男性,当初保険金額1億円,保険期間36年,経過7年目から保険金額10%複利逓増のケースである。保険期間満了の年齢は「50歳+36年=86歳」で80歳超,加入年齢「50歳+36年×2=122」で120歳を超えている。すなわち1/4損金に該当する。
保険料は年払い1229万9800円,解約した場合の「返戻金÷その時点までの保険料累計」である返戻率は1年経過時で80.8%と高く,その後経過とともに上昇しながら8年目で100%を超え20年目までその水準が続く。その後返戻率は低下するが,25年段階でも93%を超える返戻率となっている。
ちなみに経過15年では,資産計上累計額1億3837万2750円に対して返戻金は1億9706万円となっており,差し引き5868万円レベルの含み益となっている。経過推移(一部)を表2で確認してみよう。
表2
経過
期間 |
1 |
6 |
8 |
9 |
15 |
25 |
30 |
36 |
保険金 |
1億円 |
1億円 |
1.21億円 |
1.331億円 |
2.358億円 |
5億円 |
5億円 |
5億円 |
保険料 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
12,299,800 |
保険料
累 計 |
12,299,800 |
73,798,800 |
98,398,400 |
110,698,200 |
184,497,000 |
307,495,000 |
368,994,000 |
442,792,800 |
返戻金 |
9,940,000 |
72,800,000 |
99,570,000 |
113,240,000 |
197,060,000 |
288,260,000 |
269,590,000 |
0 |
返戻率 |
80.8% |
98.6% |
101.1% |
102.2% |
106.8% |
93.7% |
73.0% |
0 |
損 金
算入額 |
3,074,950 |
3,074,950 |
3,074,950 |
3,074,950 |
3,074,950 |
25,214,590 |
25,214,590 |
25,214,590 |
損金
算入
累計額 |
3,074,950 |
18,449,700 |
24,599,600 |
27,674,550 |
46,124,250 |
165,432,310 |
291,505,260 |
442,792,800 |
資産
計上
累計額 |
9,224,850 |
55,349,100 |
73,798,800 |
83,023,650 |
138,372,750 |
142,062,690 |
77,488,740 |
0 |
このケースでは,死亡率の高い時期に保険金が高く設定されているため,毎年の保険料は長期の前払いとして,当初6割期間については保険料3/4が資産計上となる。それだけ将来の便益のための費用として責任準備金に繰り入れられ,将来の支払い財源としてとってあるわけであり,それを基準とする返戻金も長期にわたって高い水準が維持されていることがわかる。しかし最終的には,保険期間の終期を迎えれば返戻金が0となり,残りの後半4割期間ですべてを損金として処理することになる。
ここまで5章にわたって数字を見ながら確認してきたが,次章は平成20年の逓増定期保険の保険料の税務に関する改定等についてみていくこととする。
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