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4.逓増定期保険の税務(1)


 前章まで,定期保険,長期平準定期保険について,商品特性や法人契約における効果をみてきた。今回は逓増定期保険についてみていこう。

 逓増定期保険は,文字通り,保険金が逓増していくタイプの定期保険である。つまり,生命保険の契約当初から,保険期間が経過し,次第に被保険者の年齢が上がり死亡率が上昇してくる時期に,死亡保障額である保険金を増加させるというものである([逓増定期保険のイメージ図]参照)。

[逓増定期保険のイメージ図]
[逓増定期保険のイメージ図]
※ 保険金額は逓増率改変年度より逓増します。

 当然,契約当初から支払う保険料は,将来の死亡保障のための保険料を前倒して平準化するわけであるから,年齢の増加による死亡率の上昇とともに,保険金の増加分のための保険料も含めて平準化されるので,定期保険や長期平準定期保険に比べて高くなることは当然である。

 この結果,将来の支払い財源としての責任準備金が大きく積み上がることになる。それだけ一定の経過時期において解約返戻金が大きくなるため,この逓増定期保険は,死亡保障目的よりも,課税の繰り延べの手段としてクローズアップされてきたといえよう。

 そのため,逓増定期保険の保険料の税務が平成20年2月28日付けで,損金算入に繰り入れる限度を抑制する方向で変更が行われた。したがって現在,逓増定期保険の税務は実態として2通り存在している。すなわち,契約時期が平成20年2月27日までのものと2月28日以降現在のものである。ここでは,まず変更後である現在の取扱いについて説明していこう。


1)逓増定期保険の定義

 「平成20年2月28日課法2−3,課審5−18により改正」において逓増定期保険は次のように定義されている。

 「保険期間の経過により保険金額が5倍までの範囲で増加する定期保険のうち,その保険期間満了の時における被保険者の年齢が45歳を超えるものをいう。

 繰り返すが,この逓増定期保険は契約当初から一定期間保険金額は変わらないが,ある時期から次第に増加していくタイプの保険である。詳細は保険会社によって相違するが,現在では保険金の増加も,年齢が上昇するに応じて複利逓増するなど,死亡率が高くなる時期に急激に増加するタイプが主流となっており,商品も相当程度工夫されている。

 このようなことから逓増定期保険の保険料の税務は,一律ではなく,被保険者の年齢や保険期間との関係などから下表の3つのタイプに規定されている。

表1 [逓増定期保険の区分と税務] ※
年齢・期間の基準 契約開始から
6割相当期間
残り4割期間
(6割相当期間経過)
保険期間満了時の年齢が45歳超(下記該当するものを除く) 保険料の1/2損金算入
保険料の1/2資産計上
支払い保険料の全額を損金算入 左記6割期間中の資産計上分の均等取崩し=損金算入
保険期間満了時の年齢が70歳超かつ
加入年齢+(保険期間×2)が95歳超
保険料の1/3損金算入
保険料の2/3資産計上
保険期間満了時の被保険者の年齢が80歳超かつ
加入年齢+(保険期間×2)が120歳超
保険料の1/4損金算入
保険料の3/4資産計上
※ 保険期間の全期間にわたって保険料を支払う全期払いの場合

 前払い保険料の要素が強いものほど,損金算入額が抑制され,資産計上の割合が高くなっている。



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