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3)長期平準定期保険の保険料の税務

 長期平準定期保険の保険料は,一定の部分が長期の前払い保険料として扱われるため,特定の期間全額損金としては扱われない。

 具体的には,保険契約の開始から当該保険期間全体の6割の期間は保険料の1/2が損金,残りの1/2が資産計上となる。その後,残り4割の期間は,毎年の保険料は全額損金に,またそれまで資産計上された金額は,期間の経過とともに取り崩して損金処理することとなる(保険期間の全期間にわたって保険料を支払う全期払いの場合)。

 長期平準定期保険の保険金,保険料,保険料累計,解約返戻金,損金算入額とその累計などを保険期間(の一部)当初から時系列でみてみよう。

 下表は,被保険者50歳男性,保険金1億円,98歳満了の長期平準定期保険(65歳低解約返戻金型※)全期払いの例である。

経過期間 10 20 29 36 48
保険金 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円 1億円
保険料 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000 2,557,000
保険料累計 2,557,000 12,785,000 25,570,000 51,140,000 74,153,000 92,052,000 122,736,000
払戻金 1,340,000 7,640,000 15,700,000 45,370,000 63,820,000 74,280,000 0
返戻率 52.4% 59.8% 61.4% 88.7% 86.1% 80.7% 0%
損金算入額 1,278,500 1,278,500 1,278,500 1,278,500 4,346,900 4,346,900 4,346,900
損金算入累計額 1278,500 6,392,500 2,785,000 25,570,000 40,144,900 70,573,200 122,736,000
資産計上累計額 1,278,500 6,392,500 2,785,000 25,570,000 34,008,100 21,478,800 0
(ある保険会社の例)

※ 65歳までの間は解約返戻金を低くしたタイプ。保険料を低減する効果を持つ。

 保険契約の開始とともに,年払い保険料255万7000円を契約者である法人が支払うが,保険期間全体の6割期間までその保険料の1/2が損金,残りの1/2が資産計上となる。後半の4割期間となる29年目には損金算入額を計算すると次のとおりとなる。

・毎年の保険料  255万7000円の全額
それまでの資産計上累計額の取崩し額  178万9900円
(3579万8000円÷20年(保険期間の残りの4割期間)=178万9900円)

 合計額434万6900円となる。これが29年以降の毎年の損金算入額であり,以降保険期間の終期まで続く。最終的に保険料累計全額が損金で処理されることになる(つまり,前述の表では保険料累計と損金算入累計が48年時点で一致する)。見方を変えると,保険期間の途中では含み益(例えば経過20年段階では,資産計上額2557万円に対して解約返戻金は4537万円となっており,この差分)が生ずる。

 その後,後半4割期間になり,最終的に解約返戻金も実額として経過40年をピークに減少をはじめ,最終的に0となって終了するわけである。長期平準定期保険の場合,返戻率が36年経過段階でも80%水準となっており,比較的長期間にわたって高い返戻金が維持されていることがわかる。

 次章では逓増定期保険についてみることとする。



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