3)従業員を対象とした生命保険契約
次に,従業員を対象とした生命保険契約であるが,これもその契約形態をまず確認しておこう。下表の通りであるが,保険金受取人が2ケース存在する。
保険契約の当事者 |
該当者 |
保険契約者 |
当該企業(法人) |
被保険者 |
全従業員 |
保険金受取人 |
当該企業(法人) |
被保険者の遺族 |
一般従業員を被保険者とした生命保険契約は,その被保険者に保険を付ける(「付保」という)額には合理的理由が必要である。この合理的理由は,通常,企業としての弔慰金や見舞金制度などの福利厚生目的を意味している。
大企業の例であるが,過去に会社が従業員に多額の死亡保険金(団体定期保険)を付保し,死亡事故が起きた際,遺族にその一部のみを渡し,会社がその大半を受け取っているとして社会的な問題になったことがある。経営者に比して,付保する保険金額が限定される理由である。
従業員を対象とした生命保険を考える際に,まず第一に挙げられるのがこの死亡時の弔慰金準備であるが,災害・疾病による入院や障害などの際には,会社からの見舞金の準備なども考えられる。これらを総称して「福利厚生加入」と名づけよう。
福利厚生という以上,その企業に在籍する従業員全員が対象となるはずである。言い換えると,一部の役職者のみとか,一定年齢以上とかの加入範囲の限定は原則的には認められない利用形態である。利用する保険種類,契約形態によって保険料の税務は「支払い保険料として損金」,「福利厚生費として損金」,「給与扱いとして損金」,「資産計上」などがある。
なお,従業員を対象とした生命保険の「福利厚生加入」は,利用保険種類によってはその利用自体が「課税の繰り延べ」を伴う場合がある。この関係は経営者・役員を対象とした場合でも同様である。
以上,概ね,中小企業における保険の対象を区分して概観した。この概観を念頭に次章から,生命保険商品の特性や,利用形態を詳細にみていくこととする。
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