先日、クライアントとともに、T県にある「小さな一流企業」と称される製造業A社を視察した。A社は、大手と対等に渡り合える独創力と技術力を有しており、社員が誇りを持って働ける会社である。
この視察を通じて、A社が「小さな一流企業」として成長発展したのは、経営者の考え方が大きく影響していると感じた。その考え方を紹介する。
創業時は売上が欲しいため、さまざまな仕事を請けてきた。しかしながら、社長は「小さな一流企業として自立するには、オリジナリティが必要である」と考え、どこで何をやるか、何をやめるかを決断した。時には、大きな売上を捨てる決断もあった。
しかし、5〜10年の歳月をかけて経営を切り替え、先んじて特定分野に経営資源を集中投資し、真に顧客から選ばれる企業となった。
売れない居酒屋に例えてみる。顧客のリクエストでメニューを増やすが、飛び抜けて美味しいものがない。メニューを増やしたばかりに業務が煩雑になり、結局顧客は離れていく。顧客から選ばれるためには、売りたいものを明確にすると同時に、質を高めなければならない。
大きくなることを経営の目標とせず、良い仕事をすることを目的とし、自立した企業として、どのような環境でも成長することを重要視している。慣れで売上が伸びてもダメ、逆に成長していれば売上は伸びていなくても良い場合もある。自社が常に正しい方向性へ進んでいるかを確認しながら、PDCAサイクルを回している。
トップ自ら、「常に先んじて新たなことをしていかなければならない。今やっている仕事は5年後には売上がゼロになる」と社内に発信し、高いハードルを掲げつつも危機感を持たせるようにしている。
不況になった時、なぜ社長がそのような発信をし続けていたかが理解でき、常に次の手を打ち続ける必要があるという意識がDNAとして芽生える。
経営者の仕事とは『方向性を示し、決断をともなうPDCAを回す』ことに他ならない。外部環境が構造転換レベルで変化している今、先見力・決断力・実行力をより一層高めていただきたい。
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