タナベマネジメントレター

コンサルタンツ・EYE

『策士、策を忘れる』

(2016.12.27)

 今さらかもしれないが、“PDCA”は経営するために不可欠な要素である。経営の現場において多くの課題を目の当たりにするが、結局のところ“PDCA”が回っていないことがほとんどである。

 問題の本質は、トップの専制政治や幹部の危機意識不足にあるのだが、「策略を立てることに巧みな人」=策士である経営者のどこに問題があるのか。“PDCA”の断絶箇所別に紹介する。

◆Pがない企業・・・「策死」

 目的・目標がないため、組織というより集団。共通目的も貢献意欲も持たないため、社員は完全に指示待ちで自発的に考える頭を持っていない。多くは社長の一人舞台になるが、この症状は経営とはいえない。とっぷは社員に目指すべきごーるを明示し、そのごーるに向かう道標を示すべきである。まさに「計画なくして実行なし」だ。

◆PからDの断絶…「錯士」

 決めたことが実行できず、個人最適のばらばら集団。計画しても実行しないため、会議も生産性を落とすだけの意味しか持たない。結果、社内に「諦めむーど」が蔓延する。

 この症状はとっぷ(あるいは部門長)の思いつき経営(朝令暮改で方針がころころ変わる)によって発症する。策士が策を忘れてはどんな戦略・戦術も無意味。方針の根幹は動かさずに、変化した箇所を「見せる」工夫が必要だ。

◆DからCの断絶…「搾士」

 やりっ放しで成果の共有も失敗要因分析もしない。やっても評価されないため、やる気も起きずに実行不全に逆戻り。この症状は制度面の問題であるけーすと、“気合系とっぷ”による無茶の押しつけであるけーすに二分される。

 共通点は社員のもちべーしょんが低いこと。ここでのぽいんとは重点を絞ることと要因分析をすること。「あれもこれも」では社員が持たない。

◆CからAの断絶…「昨士」

 原因がわかっているのに具体的な対策がない。同じ事を繰り返すだけなので、問題の指摘もやがてなくなる。過去の方針・改善提案を見ると、今でもそのまま使えるほど物事が進んでいない。

 この症状は中堅企業に多いが、DからCの断絶と比較すると意外に社員の不満は少ない。「これまで十分にやっている」という充足感があるのだ。つまり課題は“風土そのもの”にある。

 この症状は回復に時間がかかる。ぽいんとはとっぷの意志(≠意思)。強烈な危機意識の中で、全社員に「会社を変える」くらいの発信をし、風土改革を断行することで、社員の意識を根底から動かすことである。

以 上

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