飲食業を営むA社から、本社費を2/3に圧縮したいという相談があった。A社の社長は2代目。先代から会社を引継ぐとき、借入金は売上高の25%以内にするというKPI(重要業績評価指標)を決め、これまで守ってきた。
しかし、収益性の厳しい昨今の経営環境下で自己資金が予定より不足し、来期の売上目標達成のために出店すると、KPIが守れなくなる恐れが出てきた。
早速、筆者を含むコンサルティングチームは本社費の調査に乗り出した。調査の切り口は「組織区分上の費用認識」「ベンチマーク企業との費用格差」「個別経費の使用状況」の3つである。
「組織区分上の費用認識」とは、本社の組織とメンバーが本来行うべき業務を適正に行っているか調査するものである。管理部門はルーチンワークが多く、組織や担当が大幅に変わることが少ない。そのため仕事が効率化しても、昔の名残や惰性で不要な業務をそのまま行っているケースが多い。調査の結果、多くの無駄な業務が見つかり是正した。
「ベンチマーク企業との費用格差」は、ライバルやモデル企業と比較し、どの程度の費用格差があるかを調べるものである。同じ業種、同じ仕事をしていても、会社によってかかるコストは違うものである。各種調査資料を元にコスト比較と原因追求を行い、明らかに高い経費は見直しを行った。
「個別費用の使用状況」は、経理上の費用を目的別に分類することから始める。「決算処理コスト」「人事処理コスト」「店舗対応コスト」「将来発展コスト」などの区分けを行い、どの目的にいくら金額をかけたかを明確にする。自社で実施するか、もしくは外注するかの判断を行い、さらに細目ごとに金額の大きいものから順に価格交渉を行った。
これらの見直しで、本社費を2/3に圧縮することができた。結果、予定通りの出店でA社は売上高を達成、経費もスリム化して過去最高益を更新したのである。
本社費は放置すれば増えるものだ。本社費の棚卸しを定期的に実施すべきである。
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