電子記録債権の会計税務と経営活用術

コラム

第4回 電子記録債権の活用方法と今後の展開

(16.06.28)

1、新しい資金調達方法としての利用
 前回までの法律上での記録事実の認識・会計処理と消費税及び管理方法を説明しましたが、今回は電子記録債権の活用手法を検討してみます。
(1)割引としての利用
 手形ではできない一部代金の割引が電子記録債権では可能です(電子記録債権法第43条)。
 電子記録債権は、分割が容易に行え譲渡可能となりますと、必要な金額を割り引くことが可能になり、資金調達の面での利用が便利になってきます。
(2)借入資金のとしての利用
 また、記録可能な支払サイト(発生から支払期日まで)について、でんさいネットでは平成28年4月より現行の最長1年から最長10年に変更になる予定です(でんさいネット通信第9回)。これは従来の金融機関から債務者(借入者)への手形貸付においての単名手形の代わりに電子記録債権を利用して貸出(借入)契約することも考えられることを意味しています(でんさいネット通信第9回)。
2、電子記録債権を巡る課題への対応として
 平成27年12月金融審議会「決済高度化に向けた戦略的取組み」(決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告)より抜粋し筆者が加工しました。
(1)利用者利便の向上
 現在、主要行(三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行) それぞれが設立した電子債権記録機関については、基本的に、金融機関との契約により譲渡先が制限され、当該主要行によるファクタリング・サービスにより資金化を受けることとなっております。債権流動化による資金調達の更なる円滑化を通じた利用者利便の向上や、電子記録債権の普及の観点からは、電子債権記録機関にかかわらず、利用企業の取引先銀行で割引を受けられるような環境が提供されることが利用者の利便に役立つと思われます。
(2)公的機関等における電子記録債権の活用
 現在、公的機関の支払いに関して電子記録債権は活用されておりませんが、公的機関がその事業等において、受注企業に対して電子記録債権を発生させれば、当該企業の資金繰りの円滑化に効果的であり、地域活性化にも資するものと考えられます。また、電子記録債権の普及の観点からも、地方自治体における電子記録債権の活用が課題となっております。
 例えば、前金払方式・中間前金払方式や出来高部分払方式によって事業代金の早期支払のための手当がされている分野以外については、特に、電子記録債権の導入による支払いの早期化等に高いニーズがあることが想定されます。  その他、この報告書では、この制度の海外展開、国際的な決済インフラの整備などが挙げられております。
 なお、2016年2月18日付け 日本経済新聞(北陸経済面)によりますと、福井県鯖江市は工事代金の支払いで、支払日より前の日付で振り出す電子記録債権を4月から導入すると報道されております。
電子記録債権を受領した企業は、期日の前に同債権を担保に取引銀行からつなぎ資金などの融資を受けやすくなります。
 地方公共団体が電子記録債権で支払いを行うことにより、電子記録債権による決済が普及することが期待されます。