電子記録債権の会計税務と経営活用術

コラム

第2回 電子記録債権の会計処理と消費税の扱い

(16.04.19)

 電子記録債権は、手形債権と同じ扱いと聞き及んでいますが、その会計処理と消費税の扱いを確かめてみます。

 まず、会計科目としての規定は、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則第15条1項2の2に流動資産「電子記録債権」、第47条1項1の2に流動負債「電子記録債権に係る債務」とされています。

 税については、支払手段として扱われているようです。消費税基本通達6−2−3(支払手段の範囲)において、(3)にて約束手形が含まれています。(5)にて「証票、電子機器その他の物に電磁的方法により入力されている財産価値であって、不特定又は多数の者相互間でその支払にために使用することができるもの」とされています。但し注記にて(5)の具体的範囲は外国為替令で定めるとされていますが、ここでも電子記録債権が該当するとは明確に記載されていません。なお、(4)にて明確に電子記録債権が該当するとはされていませんが「(3)に類するもので支払のために使用することができるもの」とされています。当方はこれに該当するものと判断しています。少し持て余しますが、支払手段として考えて間違いは無かろうと思います。

 そうであれば、消費税法においても電子記録債権は約束手形と同じ扱いで考えることができます。

 以下、平成21年4月9日企業会計基準委員会が公表した実務対応報告第27号「電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い」の設例に準じて、手形と比較しながら消費税に判断を入れて会計仕訳を行なってみます。

取引種類/
手形・電子
記録債権
手形 電子記録債権




消費税の考え方 約束手形、為替手形の譲渡は非課税取引であり、且つ課税売上割合計算でも0円となります(消令48条2項)。従い手形受取・譲渡・割引の際消費税は発生しません。 同左







*債権の譲渡として非課税取引 売掛代金100を約束手形で受取った。 発生記録により電子記録債権100が発生。
借方:受取手形(非)100/貸方:売掛金100 借方:電子記録債権(非)100/貸方:売掛金100

*債権の譲渡として非課税取引 買掛金100の決済に約束手形100を裏書した。 譲渡記録により買掛金100と引き換えた。
借方:買掛金100/貸方:受取手形(非)100 借方:買掛金100/貸方:電子記録債権(非)100

*債権の譲渡として非課税取引
*割引料は非課税取引(消令10条3項7号)
割引料30で約束手形100を割り引いた。 譲渡記録により現預金70と引き換えた。
借方:預金70/貸方:受取手形(非)100
借方:手形売却損(非)30/
借方:預金70/貸方:電子記録債権(非)100
借方:電子記録債権売却損(非)30/





*代金決済として不課税取引 受取手形の決済 記録消滅により電子記録債権の決済
借方:預金100/貸方:受取手形(不)100 借方:預金100/貸方:電子記録債権(不)100






振替
*債権の譲渡として非課税取引 買掛代金105を約束手形で支払った。 発生記録により電子記録債務105が発生。
借方:買掛金105/貸方:支払手形(非)105 借方:買掛金105/貸方:電子記録債務(非)105





*代金決済として不課税取引 支払手形の決済 記録消滅により電子記録債務の決済
借方:支払手形(不)105/貸方:預金105 借方:電子記録債務(不)105/貸方:預金105
実務対応報告第27号では、営業行為ばかりでなく貸付金や固定資産購入・有価証券購入など営業外を基因とする電子記録債権債務の発生も仕訳例示とされています。
電子記録債権は、保証も記録することができますので、保証記録がある場合には、偶発債務としての注記が必要となってきます。