第1回 電子債権の仕組み(会計税務の観点から)(16.03.16)
1、電子債権の成立と特徴 電子債権、正式には電子記録債権と呼ばれます。 電子記録債権制度は、e−JapanII戦略(平成15年度IT戦略本部決定)において、与信方法の多様化、融資に関する手続きの簡素化により中小企業の資金調達環境を改善することが「先導的取組」として位置づけられました。 電子記録債権法は、平成19年6月に成立、平成20年12月に施行されました。 特徴としては、
2、電子記録債権法の概要 電子記録債権法の概要(法務省)、電子記録債権法の概要について(金融庁)及び電子記録債権パンフレット(金融庁・法務省)より、会計・税務に関係すると筆者が判断した部分について概要を説明し、電子記録債権法(以下法と呼びます)及び電子記録債権法施行令(以下令と呼びます)の条文に当ってみます。 <電子記録債権とは> 金銭債権であって,磁気ディスク等をもって電子債権記録機関が作成する記録原簿への電子記録を債権の発生,譲渡等の効力要件とし,その権利内容が当該記録原簿の記録によって定まる電子記録債権です(法2条3条9条)。 <電子記録債権機関とは> 主務大臣(法務大臣・金融庁長官)が申請を受け,安定的・継続的な業務運営等を図る観点から財産的基盤や適切なを電子債権記録業を行う者として指定しています(法51条)。 電子記録債権の記録機関は、(株)全銀電子債権ネットワーク(通称:でんさいネット)に加え、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行のそれぞれの子会社、計4つの記録機関で運営されております(金融庁ホームページ・免許・許可・登録等を受けている業者一覧より平成28年2月14日現在)。 <電子記録の請求と記録及び効力>
<電子記録債権の発生> 債権者と債務者の双方が電子債権記録機関に「発生記録」の請求をし、これにより電子債権記録機関が記録原簿に「発生記録」を行うことで電子記録債権は発生します。
<電子記録債権の譲渡> 譲渡人と譲受人の双方が電子債権記録機関に「譲渡記録」の請求をし、これにより電子債権記録機関が記録原簿に「譲渡記録」を行うことで電子記録債権を譲渡できます。
<電子記録債権の消滅> 金融機関を利用して債務者口座から債権者口座に払込みによる支払が行われた場合、電子記録債権は消滅し、電子債権記録機関は金融機関から通知を受けることにより遅滞なく「支払等記録」をします(法第25条1項)。
<電子記録債権の保証> 電子記録債権の譲渡する際に保証記録も行うこともできます(法第31条)。 電子記録債権に関する会計処理の発生事実は、電子債権記録機関が作成する記録原簿への記録事項の記録で発生するものと考えられているため(平成21年4月9日企業会計基準委員会公表、実務対応報告第27号「電子記録債権に係る会計処理及び表示についての実務上の取扱い」目的)、会計記録が必要な事実発生に係る電子記録債権の記録事項について、上記の発生・譲渡・消滅・保証について主な法律事項をピックアップしたものと考えています。なお、電子記録債権の記録については、その他に質権設定記録、変更記録、分割記録などがありますが、会計処理との観点からここでは説明から除いております。 |
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