社会福祉法人の会計・経理Q&A


Q43
 予算の弾力的運用(予算の流用、予備費の使用)について、留意点を教えて下さい。



A43

 社協モデル経理規程では、次のように予算の弾力的運用が明文化されています。


第17条(勘定科目間の流用)
   会計責任者は、予算の執行上必要があると認めた場合には、会長の承認て、拠点区分内の勘定科目相互間において予算を流用することができる。ただし、勘定科目間流用に関し、特段の定めがある経理区分についてはこの限りではない。
第18条(予備費の計上)
   予測しがたい予算の不足を補うため、理事会の承認を得、原則として評議員会の議決を経て支出予算に相当額の予備費を計上することができる。
第19条(予備費の使用)
    予備費を使用する場合は、会計責任者は事前に会長にその理由と金額を記載した文書を提示し、承認を得なければならない。


(1)支出予算の流用に関する留意点

 [1]  他のサービス・拠点区分の予算を流用することは認められません。

 [2]  予算の流用を無制限に認めると、予算統制の機能が損なわれるため、法人内において、「支出予算の流用」の限度を設定することも考えられます。例えば、事業の性格により、次のようなケースがあります。
   大区分の勘定科目間の支出予算の流用を認めるケース
 この場合は、支出予算全体で予算オーバーとならない限り、「支出予算の流用」で対応できます。なお、支出予算全体で予算オーバーとなる場合は、「予備費の使用」か「予算の補正」で対応することになります。

   大区分の勘定科目間の支出予算の流用を認めず、個々の大区分の勘定科目に含まれる中区分の勘定科目間の支出予算の流用のみ認めるケース
 この場合は、個々の大区分の勘定科目が予算オーバーとならない限り、「支出予算の流用」で対応できます。なお、個々の大区分の勘定科目で予算オーバーとなる勘定科目があれば、その勘定科目は「予備費の使用」か「予算の補正」で対応することになります。

   特定の大区分の勘定科目間の支出予算の流用のみを認めないケース
 これは、上記アとイの中間的なものです。

 [3]  実施している事業によっては、特段の定めにより勘定科目間の支出予算の流用を認めていないケースがあるため、注意が必要です。


(2)予備費の計上と使用に関する留意点

 [1]  予備費計上の限度額について
 予備費は、少額な場合は支出予算の弾力的運用の効果がなく、多額に計上することは、理事会等による支出予算統制機能が損なわれることになるため、法人内部で、支出予算における予備費計上額に限度額を設けることも考えられます。
 実施している事業の性格にもよりますが、「支出総予算額の1%以内」等、法人内部で検討し、適当な限度額を設定しておくことも重要です。
 一般的には、収入予算額の3%程度が限度と言われています。

 [2]  予備費の使用について
 支出予算については、まず「支出予算の流用」で対応し、対応できない場合に「予備費の使用」を行うことになります。
 予備費を使用しても予算オーバーとなる大区分の勘定科目がある場合は、「予算の補正」で対応することになります。