社会福祉法人の会計・経理Q&A


Q14
 減価償却の考え方について、教えてください。



A14

 減価償却は、費用配分の原則に基づいて固定資産の取得価額を、その固定資産の耐用期間における各事業年度に配分することです。
 これは、取得した固定資産がその機能を発揮し、事業活動のために貢献するのは、使用期間(耐用期間)全体にわたるからです。そこで、固定資産の取得価額を一度に費用処理せず、耐用期間(耐用年数)にわたって、その貢献を費用として認識することになります。
 すなわち、固定資産は時の経過あるいは利用により徐々にその価値が減少するので、固定資産の価値を正しく示すという貸借対照表からの観点と、固定資産の価値の減少を費用として認識することにより、毎期の適正な損益計算を行うという事業活動収支計算書からの観点です。

 また、資金支出は取得時に行われますが、減価償却は資金支出を伴わないものです。その結果事業活動計算上の事業活動収支差額を上回る余剰資金が生じます。これを「減価償却の自己金融効果」とも呼んでいます。この余剰資金により減価償却資産の更新資金準備が行えることになります。
 ただし、当該資産が借入金により取得されている場合には、この余剰資金は借入金の返済原資となる場合があります。その場合には、更新資金の準備は別途必要となってきます。

 減価償却の対象となるのは、時の経過あるいは利用により価値が減少する固定資産ですので、建物、構築物、機械装置、車両運搬具、器具および備品などが該当します。
 このような資産を減価償却資産と呼びます。
 土地は、時の経過あるいは利用により価値が減少するものではないので、減価償却資産には該当しません。

 減価償却を計算するには、(1)取得価額、(2)耐用年数、(3)残存価額の3要素を決める必要があります。
 取得価額は、その取得の形態により、次のように計算します。

(1)購入した場合・・・購入価格と付帯経費の合計額

(2)製作または建設した場合・・・直接原価と付帯経費の合計額

(3) 無償または著しく低い価額で取得した場合・・・取得のために通常要する価額(時価)

(4)交換により取得した場合・・・交換に提供した資産の帳簿価額

 耐用年数は、本来、各法人が個々の資産の実態により使用可能期間を合理的に見積もることが理想ですが、実務的には困難です。そこで、実務上は、大蔵省令である「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づき耐用年数を決定します。これを「法定耐用年数」と呼んでおり、資産の種類、構造、用途により一律の耐用年数が定められています。
 残存価額は、耐用年数経過時のスクラップ価額であり、これも各法人が合理的に見積もることが理想ですが、実務的には困難です。そこで、実務上は、大蔵省令で定められている「取得価額の10%」で計算することとされています。

 減価償却の計算方法は、原則として、「定額法」によります。例外として、「定率法」が認められています。