相続手続き事例
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役所で全て済ませました ― 年金・保険
(2011/02/28)

 子どものいない高齢者夫婦や配偶者に先立たれた一人暮らしの高齢者の場合、年金や保険に関する相続時の手続は、市区町村の役所の窓口で相談されて処理されるケースがほとんどです。

 先日、私共のセンターに相談にみえたA子さんは、「年金、保険については区役所の窓口で相談して全て済ませましたので…。故人が残した遺言書にもとづいて家の登記関係と故人の使用していた乗用車の名義変更をお願いします」とのことでした。

 Aさんは60歳で、マンション経営をするBさんと10年近く夫婦同然に同居をしていましたが籍は入れていませんでした。Bさんが先月亡くなられたので、手続のことで相談にみえたのです。

 Bさんの長男の代わりにA子さんが区役所に行って、国民健康保険証を返却し、葬祭料などの受給手続をされました。しかし、Bさんの未支給年金について区役所は、「長男は同居されていませんので、受給資格がありません」との回答でした。

 結論から先に述べると、この区役所の回答は、現況(A子さんが10年近くBさんと夫婦同然の同居をしていた事実)を正しく把握したうえでの回答ではありません。

 A子さんには、未支給年金の受給資格があります。たとえ籍には入っていなくても、配偶者と同等の状況にあり、生計を同一に営んでいれば、『未入籍の妻』として認められます。このケースは、区役所の窓口でA子さんが自らの現況を説明しなかったために、職員は親族関係だけを聞き取り、そこから判断して「受給資格者に該当する方はありません」と答えたのでしょう。これが遺族年金の受給資格がある方の場合ですと、「私は該当しないのだろうか?」という意識が働くので、今回のように見過ごされるケースは稀です。

 未支給年金は、厚生年金も国民年金も後払い制度のために生じるケースです。例えば2・3月分の年金が4月に支給されるように、受給の権利が発生する時点と実際に支給される時点が異なることによります。

これとは逆に、年金受給者の場合、先払い制度のために還付されるのが、介護保険や後期高齢者医療保険の保険料です。支払われる年金から当月分と翌月分が徴収されますので、年金支給月に亡くなられた方は先払い分の還付が受けられます。

もうひとつ、公的医療保険制度は、1ヶ月に一定額以上医療費を支払った場合、超過分が還付されますがこの場合も見落としがちです。生前は役所より通知が来ますが、相続発生時には健康保険証も返還していますし、医療機関からのレセプト請求は3〜4ヶ月遅れて届くので、もれるケースが多々あります。

 役所の窓口で全て相談したといっても、病気だったのか、事故だったのかというように職員が詳しく死亡原因などを聞き取って回答してくれるわけではないので、このような手続もれが発生するのです。ところが、一般の方は役所で保険や年金について全て相談したつもりでいるので、「手続は全て終ってます」となってしまうのです。

 ここに誤解というか、手続もれが発生しますので気をつけてください。




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