資金繰り入門
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本業で資金を稼ぎ出しているの? 営業的な収支に着目する

 資金繰り表からは、「何が資金繰りを苦しめているのか?」「どうすれば資金繰りがラクになるのか?」など、さまざまなことを読み取ることができます。

 経営的には営業的な収支を見ていくことが非常に重要ですからこの様式が便利です。

予想・実績 資金繰り表

 上記の図を見て下さい。


1.営業収支全体のバランスを見ます

 これは、貴社が営業活動によって得た資金で営業経費を支払うと幾ら残るかを見ることができます。企業経営では、この営業収支が黒字でなければいけません。幾ら損益上黒字であってもこの営業収支が赤字であれば、その原因を徹底的に探る必要があります。

 損益上黒字であっても、営業収支が赤字の会社の原因として、(1)売掛金の回収が順調でない。(2)在庫が増加している。などが考えられます。対策として、(1)売掛債権年齢調べを行い、不正常の得意先に対して回収計画の立案、債権放棄による損切り等検討。(2)在庫増加について、原因調査・在庫処分等検討をしてください。

 上記の結果、損益上の黒字が赤字になることも十分ありえます。会社の本当の姿を直視してください。


2.臨時の支出の調達方法は健全か?

 設備投資や法人税の支払など臨時の支出は額がかさみますから、資金の調達方法をあらかじめよく考えておく必要があります。短期の借入金や手形割引などで対応すると、将来の資金繰りが苦しくなってくることが予想されます。設備投資の資金調達は、長期借入金やリース・利益や増資による自己資本が望ましい。短期借入金で設備投資はもってのほかです。


3.借入金返済と投資のバランスはとれているか?

 ここで借入金返済と投資のバランスに着目してみましょう。

 たとえ毎月40万円の利益が上がったとしても、必ずしも同額の返済が可能になるわけではありません。利益が40万円出れば税金が20万円かかりますから、実際に残るのは半分の20万円です。減価償却費が毎月5万円しかなかったとしたら、利益が即、現金で入金されたとしても、月々25万円しか返済に充てる事が出来ません。

 借入金の1番確実な返済原資となるのは減価償却費です。減価償却費は実際には支払っていないお金が費用になっているので、課税されることなく丸々借入金の返済に充てる事が出来るからです。無借金経営の算式とは、長期借入金返済=利益の半分 + 減価償却費です。貴社は大丈夫ですか。


4.銀行の融資枠と担保の問題

 資金調達の順番をよく聞かれますが、それぞれの特徴を考慮し、以下の順番を厳守してください。(1)国民生活金融公庫の無担保融資 (2)各金融機関の無担保融資【ビジネスローン等】 (3)保証協会付融資 (4)担保付融資です。資金調達の順番と与信枠を常に把握することが、経理・財務の基本的業務です。


5.長期・短期の借入れバランス

 貴社が、資金不足に陥って、結局、1年がかりで返済した金額を再度借り入れることにしたとします。このときの借入れは短期資金です。長期分で返済していた元金も短期資金となると、翌期から毎月の返済が増えて、いっそう資金繰りが圧迫されることになります。

 こうした会社は、長期・短期の借入れのバランスと銀行の返済方法を見直し、短期資金を長期資金に変更してもらったり、5年返済を10年返済にしてもらうように交渉するなど、無理なく支払いが出来るように改善していく努力が必要です。

 こうした点に注目して、投資を行なうときは、資金繰り表をにらみながら、無理のない返済計画を立てたいものです。


6.資金繰り表を将来に生かす

 前記のように資金繰り実績表を簡単に見てみました。せっかく資金繰り表を作るのですから、有効に使っていかなければ意味がありません。

 通常、資金繰り表は、現金不足の場合にはどう手当し、現金過剰の場合にはどう運用するかを決定するために使います。しかし、さらに、そこから一歩進めて結果を分析し、検討を繰り返すことで、現在だけでなく将来の経営に役立てていくことが大切です。

 最近では、『会社が活動した結果、いかにしてお金を生み出していくか』ということが大きな課題になっています。そのために、資金繰り表は大変重要な役割を持っているのです。


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