決算報告書入門
 損益計算書の見るべきポイント 前へメニューへ次へ

損益計算書の見るべきポイント

●損益計算書の見るべきポイント

 損益計算書で言うなら、お尻から追いかけて行った方がいいかもしれません。当期純利益から法人税等を差し引く前の利益が、税引前当期純利益です。

損益計算書

売上高(何をいくら売っているのだろう)
売上原価
売上総利益(いわゆる粗利) C(A−B)
販売費及び一般管理費(どんな経費を使っているのだろう)
営業利益(ここがポイント! 会社の本業の利益 E(C−D)
営業外収益
営業外費用(銀行借入金の利子等)
経常利益(会社の本当の実力) H(E+F−G)
特別利益
特別損失(固定資産の売却損や前年度の経理の間違い等)
税引前当期利益 K(H+I−J)
法人税等
税引後当期純利益(最終的な会社の利益) M(K−L)

 ただ、当期純利益や税引前当期純利益だけを見ていては、経営の問題点ははっきりしてきません。

 当期純利益や税引前当期純利益には固定資産の売却益などの臨時的に発生した損益も含まれてしまうからです。税引前当期純利益の上の方に、経常利益という項目があります。

 経常利益とは「毎期繰り返す事業活動の結果の利益」です。本業の儲けと受取利息や支払利息といった財務活動などの損益を含めた結果です。金融機関や外部の人があなたの会社を評価するには、まず経常利益を見ます。会社の健康診断をする上でも、この経常利益がとても大事な数字となります。

 注意しなくてはいけないのが、当期利益が黒字でも、経常利益が赤字、もしくは、利益がほとんど出ていない会社です。つまり、本業以外の臨時的な収益で黒字になっていることを意味します。臨時的な収益がなくなれば、たちまち会社に経営危機が訪れます。当期利益が黒字でも、喜んではいられません。これとは逆に、当期純利益が赤字でも経常利益が黒字になっている会社があります。経営再建中の会社によくある傾向です。稼働率の悪い設備を廃棄処分して、より効率の良い経営を目指していくような事例であれば、当期純利益が赤字でも、来期以降に期待が出来ます。単に当期純利益が赤字か黒字かで判断すると、問題の本質が見えなくなるという好例です。

 経常利益の上にあるのが、営業利益です。営業利益とは、会社が本業で得た利益のことです。注意しなくてはいけないのが、経常利益は黒字でも、営業利益が赤字だという会社です。

 この場合、本業の赤字を雑収入などの収益で補填していることを意味します。本業が不振になっている原因を探らないと、いずれ経営危機が訪れます。

 これとは逆に、経常利益は赤字でも、営業利益が黒字だという会社もあります。金利負担が重すぎることが主な原因です。とはいえ、本業は儲かっているのですから手のほどこしようはあります。粘り強く金融機関と交渉し、理解を得ながら本業に邁進していくことです。そして、最後に売上総利益があります。これは俗にいう「粗利益(あらりえき)」と呼ばれるものです。製品・商品の売上高から、その製造・仕入にかかった費用を差し引いた本業で得た利益の骨格部分です。

 本業による利益の骨格部分ですから、ここを伸ばしていかないと儲かる会社にはなりません。

 以上の事から「お尻の方から見ていく」という意味がお分かりいただけたでしょうか。

 損益計算書の当期純利益だけを見ていると、木を見て森を見ずということになってしまいかねないのです。


●損益計算書で重要なポイント

1.粗利率(売上総利益率)・原価率

 まず最初に押さえておくべきことは、自社の粗利率(売上総利益率)・原価率です。自分の会社の粗利率・原価率はいくらか、それは同業他社に比して高いのか、低いのか、前年度と比較して良くなっているのか、等々の検証・分析です。中小企業では付加価値=売上総利益とも言えますので、社員の創意工夫の成果を図る大事な指標と言えます。

 ●売上総利益÷売上高×100=売上総利益率
 ●原価÷売上高×100=原価率
 ●原価率+売上総利益率=100%


2.経常利益率

 これは、突発的なことがない場合の会社の事業全体での儲けの割合をみる指標です。最低2%は確保しないといけません。

 ●経常利益÷売上高×100=経常利益率


3.1人当たりの売上総利益額

 ●売上総利益÷社員=1人当たりの売上総利益額

※パート・アルバイトについては、年間パート等支払総額÷社員平均支払額で社員数に換算します。

 地域・業種にもよりますが、1人当たりの売上総利益が800万円を切ったら要注意です。800万円の売上総利益から家賃等の経費と人件費を支払うのですから、人件費が50%としても、400万円しか予算がありません。

 間違った経営者や社員は400万円が全額給与とよく勘違いしますが、人件費は、給与+賞与+退職金+社会保険料の会社負担分+労働保険料+通勤費等がすべて含まれます。

 400万円のうち社員が給与で貰えるのは良くて300万円です。賞与夏冬1カ月としても、月の給与は21万円が平均給与となります。これでは良い人材も、集まりようがありません。1人当たりの売上総利益は1千万円が必要と理解していただけましたでしょうか?それには売上総利益を上げるか、社員を減らすかの選択が問われます。


4.経費額上位3つが75%以内に収まっているか否か

 業種によって異なりますが、経費の上位3つの科目の合計が75%以内かどうかを検証してください。

 例えば、飲食・小売であれば、原価率+人件費率+地代家賃率の3つの比の合計が75%以内であれば、おおむね経常利益が2%前後で黒字経営が可能です。原価率30%、地代家賃10%、人件費率35%という具合です。自社の原価率と人件費率が予測できれば、地代家賃にかけられる比率も決まり、店舗出店計画の是非の判断材料にもなります。10%が精いっぱいの地代家賃率であれば、地代家賃の10倍の売上が可能か否かが出店是非の判断となります。


 損益計算書の見るべきポイント 前へメニューへ次へ