経営支援徒然帖

会社の生産性アップ
(15/10/09)

 反TPP論者に対する反論として、TV等で経済学者がよく『比較優位』という理論を用います。これは、自由貿易に関して生まれた考え方で、経済学者デヴィッド・リカードが提唱した説です。

 理論自体は、『比較優位を持つ財の生産に特化し、他の財は輸入することで、それぞれより多くの財を消費できる』という国際分業の利益を説明する理論です。この理論は貿易に限らず、会社内の人員配置にも応用が可能です。

 つまり、ほかの人と比べて能力の劣っている人でも、分業の成り立つ仕事の上では『比較優位』を持ち、仕事に貢献できるというものです。例えば、ある会社で経営者Aと社員Bがいます。事務処理能力等に関してもAの方が有能というケースがあります。一見すると「経営も事務処理も、絶対的優位な能力を持つAが行い、自分より事務処理能力が劣るBは必要ない。」となりそうですが、そうではないと考えるのが比較優位の考え方です。

 経営の仕事に関しては、AとBとの間には著しい能力差があります。事務処理の仕事に関してのAとBとの間の能力差はわずかです。この場合に、事務処理の仕事に関して、Bは比較優位にあります。

 時間は有限であり、どんなに優秀な経営者でも体は一つしかありません。今まで自分でこなしていた事務を他人に任せれば、その時間を経営の仕事に回せます。事務の効率は少し落ちますが、それ以上に経営の効率が高まりますので、トータルでの生産性は高まります。このように、比較優位の考え方を用いれば能力の劣る人も会社の生産性アップに貢献できます。分業を上手にやる仕組みやコミュニケーションが重要になることでしょう。

 自社の分業体制や人員配置について、再検討をしてみてはどうでしょうか。