経営支援徒然帖

会社の経営数値「倒産の予兆を見抜く6つの数字」
(14/04/08)

 会計事務所の職員の皆さんは自分の顧問先の経営上の危険情報、顧問先の利点を瞬時につかみ、経営者にうまく伝えられますか?

 毎月、定例の経営会議に参加していると色々な経営数値が実際の経営に結びついて、きちんと理解できるようになります。


倒産の予兆を見抜く6つの数字

 顧問先の会社は生き物です。常に正しい経営数値をつかみ、先行管理しなければ会社はいずれ倒産してしまいます。

 まして、会社が計画通りに動かなくなると、経営者は自分の会社を客観的に見れなくなり、一気に倒産街道まっしぐら、破綻は早いでしょう。

 客観的な評価とは、会社の健康診断を絶えず受けるように、冷静に会社の実態をつかむことです。

 それでは、倒産の予兆と何でしょうか?


【1】銀行からの借入金が月商の4倍に達した時は要注意である

 6ヶ月を超えたらもう会社は倒産の危険水域に入っていると思ってよい。

 ただし、この借入金とは真水の借入金であり、現預金がたくさんある会社もあり、借入金−現預金で真水の借入金のことを言う。現在、金利水準がだいたい2.5%から4%であり、日本の平均的企業の経営上利益率が2%前後で、月商の6ヶ月以上の借入金は支払利息で経常利益が吹っ飛んでしまう ことになる。

 小泉改革の竹中さん等が商工ローンの金利上限規制は中小企業の資金繰りを困難にする云々は、中小企業の実態から見てとんでもない勘違いと言える。現在の中小企業の経常利益率をよく見ても、18%から20%以上の金利を支払える中小企業など全くない。

 商工ローンからお金を借りて、立派な会社が何社あるのか、倒産しなかった会社は何社あるのか、調べてから言って欲しいものだ。彼らの言う日本の中小企業の利益率が低い、付加価値が低い等々はその通りであるが、それも現実であり、利益率を上げる仕組みを提案せずに、高利貸しを残す規制緩和は犯罪である。


【2】売上高、利益が予算や前期同期と比較して2割以上減少した場合

 5%から10%程度の減少であれば、季節変動や景気動向の問題と考えられ、また会社の構造的な問題としても、原価の逓減、人件費の減額、経費の節約で対応できますが、2割以上、下落した場合は、その程度の経営判断では対応できない。商品、サービスの見直し、立地の変更、廃業も視野に入れて考える必要がある。

 だらだらと、6ヶ月以上経過すると大きな赤字となり、倒産は近い。


【3】1人当たり売上総利益が700万円を切った場合

 中小企業の対売上総利益人件費比率はおおむね5割。1人あたり売上総利益が700万円を切ったとなると、1人に使える人件費は350万円程度。この350万円の中には、通勤交通費や社会保険の会社負担分も入っている。結果、社員の人に支払える額面給与の総額は、平均で270万円程度。地方と東京の給与水準の違いがあるが、平均給与が270万円程度の会社となると有能な社員の退社も出て、更に売上が下がる可能性が高い。


【4】銀行が追加融資を申し込んでも回答が遅くなったり、なかなか返事がもらえない

 これまですぐ対応してくれていた銀行が、やれ資金繰り表を出せ、経営計画を出せ、他銀行の借入明細表や在庫表、売掛残高表等々を要求するようになったら要注意。銀行は貸したくないか、債権の保全、回収を考え始めたということ。今後運転資金の新規融資、折り返し融資が厳しくなることは間違いない。


【5】月末の現預金残高が毎月の経費の1ヶ月分にも満たない場合

 月次の試算表や決算書の現預金残高が少ない会社は要注意。毎月支払う、固定費的な人件費、経費の1ヶ月分にも満たない現預金残高であることは、売上のちょっとした回収時期のずれ、貸倒等があれば、一気に給与の遅配、社会保険、税金の滞納等が発生する。もちろん銀行の借入金も遅延することになり、一気に信用不安が発生する。


【6】3ヶ月先の資金繰りの見通しが立たない場合

 毎月実績資金繰り表と3ヶ月予定の資金繰り表は会社経営の基本であり、経理担当者の最低限の仕事と考えてよい。その場合、今後3ヶ月の資金不足額を早期に把握し、取引先銀行に手当の打診、申込準備をするのが、経理・財務担当者の仕事であるが、その目鼻が立たない時は要注意である。現在の不動産、建設業、運輸業等がそうであるが、銀行は新規融資に全く応じてくれず、資金調達が不可能、資金繰りのメドが立たない会社が急増している。

 この場合、会社の規模、業種、財務内容等々で色んな処方箋が考えられるが、要は無借金経営が可能か否かである。ここでいう無借金経営とは、営業収支、つまり、毎月の売上入金で、原価・人件費・経費支払いが可能かということであり、可能であれば、銀行から借入できないのであるから、返済を一時待ってもらい、景気回復すれば、銀行借入返済に応じる道を選択することである。ここでは、税理士・弁護士との協力支援が欠かせない。

 この他にも倒産予兆信号は色々あり、会社の業種や業態によって当てはまらないこともあるかも知れません。しかし、上記のうちの2つも当てはまれば会社は相当危ないと考えるべきです。実際はこのような数字よりも、「お金の心配で寝むれなくなる」、「お金で夫婦喧嘩が絶えない」、「社長の顔も社員の顔も暗い」、「会社の雰囲気ががさがさである」、「社員がふてくされても上司が注意できない、しない」、「好きな読書も楽しくない」、「食事の味がしない」等々の心理的兆候が現れているはずです。こんな時にどうすればよいのか、一から再出発する覚悟で出直すことです。そのための前提は何でも相談できるすぐれた顧問税理士や弁護士さんを日頃から見つけておくことです。