経営支援徒然帖

なぜ残業をしてはいけないのか?
(11/02/01)

 残業をしている会社の経営者は、「会社にとって必要だし、社員も納得して残業している」と言います。また、「顧客からの納期要請がきつくて仕方なしに残業が多くなる。」等々残業が仕方ない、必要悪だと考えている企業はまだまた多いと思います。そのような経営者が居て、会社の雰囲気がそうであれば、新入社員も「定時に帰るのは気まずい」等々、自然と残業が多くなってしまいます。そして、残業が多い会社ほど倒産の危険性は高くなります。

 なぜでしょうか? 私なりにその理由を考えました。

 
1.会社のムリ・ムダ・ムラの原因があいまいになる

 もし人間が死ぬことがなかったらと考えたことはありませんか? どんな人も100歳まで生きられるのは稀です。寿命があることが分かっているからこそ、人は現在を一生懸命生きようとするのだと思います。

 仕事も一緒です。納期があり、投入できる時間が決まっているから、創意・工夫が生まれるのだと思います。

 もし、定時で終了しなかったら、見積もり時間が間違っていた。段取りが悪かった。間違いがあり、やり直した。等々の原因が追究でき、次回から改善策が生まれ、人は進歩していきます。

 残業を野放しにすることは、これらの原因追究をしなくなることです。能率を上げる、業務を合理化する、標準化する、問題を顕在化させ、生産性を上げることが一番重要なことなのです。


2.仕事が趣味になってはいけない

 稀に仕事が楽しいという人に出会います。個人個人で仕事が楽しい人もいてもいいでしょうが、会社は仕事がイヤな人もいることで成り立っています。限れた時間内で仕事をして、自分の自由な時間を持ちたいという人がいて、自由な時間が仕事だという人も居て構わないということです。

 そうであれば、まず時間内で業務を処理することが大切です。

 経営者や仕事が趣味の人は、自宅で仕事をする、するように心がけるべきです。中小企業のほとんどの経営者は仕事が好きで、趣味だという人も多いでしょう。

 しかし、雇われている人の本質は、自分や家族のために働いているのです。その中でたまたま仕事が趣味だと勘違いしている人がいるのだということを自覚しておくことが重要です。

 なぜなら、事態を正確に理解できない経営者の多くは、社員も自分と同じように仕事が好きで、仕事が趣味だと勘違いすることは自然な感情なのです。

 ですから、自分と同じく年中無休で会社と仕事に夢中な人間の評価が高く、定時に帰る、残業を嫌がる社員は、やる気がない、会社に貢献しない、等々の不満を口にするようになるのです。

 それは根本的に間違っています。

 身内だけで通用する論理です。


3.残業は優秀な人材を流出させる

 残業が多い会社は、仕事に間接的に役立つ人間関係づくりや相対的な視点を獲得することや、何よりも優秀な女性社員を流出させてしまいます。優秀な女性社員でも、結婚・出産・育児のため残業が困難であれば、職場を辞めざるを得ないからです。また、資格試験勉強ができずに辞めていかなければならいのも同一の理由です。一生懸命資格取得の勉強をする人ほど貴重な人材ではないでしょうか?

 顧客の都合の打ち合わせ、会議等のやむを得ない理由がない限り、残業をなくすことが、企業の生産性を高め、付加価値をつける第一歩なのです。