電子請求 請求書の電子化を推進することで「生産性向上」「時短」「コスト削減」を実現すると共にペーパーレスによる「地球環境の保全に貢献」します。

【コラム】税理士・会計士から見た企業経営と電子請求

月次決算早期化から始める会計情報システムの構築

1.「会計がわからないで経営ができるか」

 17年ほど前のベストセラー、京セラ創業者の著した『稲盛和夫の「実学」』(日本経済新聞社)(今は文庫本で発売されています)。その帯には「会計がわからないで経営ができるか」というコピーが踊っていました。我々会計に携わる人間にとっては、まさに我が意を得たりというところでした。

 「会計は、経営に役立つ」という当たり前のことをお客様である経営者に今ひとつお伝えしきれずにいた私に確固たる自信と勇気とを与えてくれた言葉(お墨付き)でした。 にもかかわらず、会計は、かわいそうなことに、現場の経営者からはいまだに相変わらず敬遠されているようです。

 それは、会計情報が、経営に直接お役立ちできるようなかたちで提供されていないからでしょう。即ち、

(イ)提供されるタイミングが遅すぎる。
(ロ)数字の羅列にしか見えず、わかりにくい。わけが分からない。
(ハ) 過去の数値の分析だけで、これからどうすればいいかのヒントになっていない。シミュレートできない。

等々の理由によります。従って、これらの困り事(不満)を解決できるような会計情報システムを構築し、会計情報の提供がなされれば、なるほど「会計は、経営に役立つ」ものなのだということになるでしょう。


2.経営に役立つ会計情報システム

 上記(イ)、(ロ)、(ハ)から、経営者は、過去の数値計算ではなく、現在の数値を早く知りたい、そして、未来の数値計算のモデル像がほしいことがわかります。すなわち今日これから後、経営をどう持って行ったらいいかを考えたいし、知りたいのだと思います。したがって、会計情報システムもその要請に応えるものでなければなりません。

 そこで、ここでは、月次決算の早期化から始める会計情報システムの構築を中心に、経営に役立つ会計情報システムの特徴を挙げてみましょう。

 具体的には、経営者が実現したいと考える会社の未来の姿を成長戦略として経営計画に描き、PDSサイクルの構築を通じて実現をサポートします。しかし、より効果的な未来会計を導入するための企業の体制を整える必要があります。私は、特にその体制を整えるために電子請求書プラットフォームの活用が効果的であると考えます。

(1)Speed

 翌月5日〜7日には、月次の試算表を経営者に提供できるよう、月次決算の早期化を図る。これをもとに、すぐに月例経営会議に入ることを意図している。そのためには、ひとり、総務・経理部門のみの課題ではなく、全社的課題として取り組むことが重要。営業部門も工場・仕入部門も月次の締めを強く意識すること。月次決算の早期化を課題にすることで、業務全体のスピードアップに結びつく。電子請求書プラットフォームを利用した請求業務のシステムを構築するなど「電子化」がそのポイントとなろう。

 また、他部門に対してどういう協力ができるか、他部門からどういう協力が得られるかという全社一丸体勢につながる思考性の端緒となりうる。

(2)Simple

 複雑なことが役に立ち、単純なことはあまり役に立たないとの考えもあるようだがこれは大いなる誤解である。数字を加工し、図・表を使ってわかりやすくする。単純化した情報ほど社員に速く、正しく伝えるのに有利だからである。

(3)Total

 ものごとは専門化(細分化)していくほどうまくいくとの考えもあるようだが、経営は統合・トータルで考えた方がうまくいく。

 会社で行われている会議は、売上、原価、人事労務、人件費、経費の削減、設備投資、銀行借入、金利といった部分の話がそれぞれの分野ごとに議論されていることが多い。しかし実際の会社の活動は、実はこれらがすべて連動しているので、全体を見渡すことができて初めてうまくいく。部分最適よりも全体最適が優先される。

(4)About → Drilldown

 報告資料はおおまかに。データは正確に。森を見てから木を見る。そして枝を見る。現場を見て確かめる。前月の成績を確かめるのは、これからどうするかを決定するため。

(5)Simulation

 現状の分析とともに、これから会社をどう導いていけばよいのか、そのための数値はどうなっていればよいかをシミュレートできるようにする。よって、これから行うべきアクションプランのヒントになりうる。1ヶ月後、今期の決算、5年後を予測しながらシミュレートできる。


3.よい会社を創ろう〜自分の会社の今を知り、未来を創る〜

 現在は不連続の時代です。過去の延長線上に未来は見えません。したがって、経営者は自分の頭で未来を描き(想像し、創造する)、PDCA経営サイクルを確立し、信頼感の下、全社一丸体勢を築くことこそが、よい会社を創るカギです。

 そのための会計情報システムも、経営者の意思決定に役立つ未来指向型に軸足を移していくべきだと考えています。まず、月次決算の早期化から取り組んでみてはいかがでしょうか。



プロフィール
武田 亨(たけだ とおる)

税理士
1955年12月20日生
中央大学商学部会計学科卒業
税理士法人RINGS代表社員 株式会社RINGS PRO代表取締役