●今月の特集
資金繰りに失敗しないためには、予定・実績資金繰り表を作成して資金管理を行うことが必要です。 資金管理とは、まず(1)損益計画を作成 (2)それをもとに予定資金繰り表を作成 (3)毎月正確な月次決算に基づく月次実績資金繰り表を作成 (4)予定資金繰り表に実績資金繰り表を結合させる (5)資金繰りの先行管理を行うことです。 図解すると、(下記図参照) (1)損益計画を作成する 直近の1年間の損益推移表を用意します。 販売費及び一般管理費・営業外計画から作成します。 前期損益月別推移表から販売費及び一般管理費の 中で前期の特殊な異常値を摘出し、今期の販売費及び一般管理費・営業外計画を作成します。 売上と売上原価作成の簡単な方法 前期の売上推移に前期比数値を×(かける)ことです。前期比105%であれば、一律前期の売上数値に1.05乗じていけばすぐ月次売上予算が作成できます。また、売上予算が確定すれば、予定原価率を乗じていけば売上原価が算定できます。 表計算ソフトを使えば30分程度で損益計画が完成します。 (2)予定資金繰り表を作成する 損益計画を基に以下のように予定資金繰り表を作成します。 予定資金繰り表(サンプル)
(3)月次実績資金繰り表を作成する 月次決算書より実績資金繰り表を作成します。 手順1 合計残高試算表〔月次決算書〕を用意する 手順2 非資金的取引の消去 当月の賞与引当金繰入/賞与引当金 各種引当金繰入/各種引当金 減価償却費/減価償却累計額〔直接法では備品等〕の非資金的取引については、試算表で消去してください。 手順3 資金繰り表を計算で埋めていきます。 前月繰越 いつでも現金化可能な現金・普通預金・定期預金・定期積金等の前月末の金額を合計してください。資金繰り表上、流動性預金のみが資金繰り可能資金として、前月繰越として表示されます。 ■営業収入 現金売上…当月売上高−当月売掛金借方となります。 売掛金回収…当月売掛金貸方−当月受取手形借方となります。 受取手形取立…当月受取手形貸方となります。 前受金回収…当月前受金借方となります。 手形割引…当月割引手形貸方となります。
その他収入…営業外収益・特別利益の合計となります。 ■営業支出 現金仕入…当月仕入−当月買掛金貸方となります。 支払手形決済…当月支払手形貸方となります。 買掛金支払…当月買掛金借方−当月支払手形貸方となります。 未払金支払…当月未払金貸方となります。 人件費支払…当月人件費科目合計 各種引当金等繰入は控除
支払利息支払…当月支払利息・割引料となります。 ■財務収入 短期借入金収入…当月短期借入金貸方となります。 長期借入金収入…当月長期借入金貸方となります。 定期性預金取崩…当月定期性預金貸方となります。 貸付金回収…当月貸付金貸方となります。 仮払金戻り…当月仮払金貸方となります。
■財務支出 短期借入金返済…当月短期借入金貸方となります。 長期借入金返済…当月長期借入金貸方となります。 法人税等支払…当月未払法人税等貸方+当月仮払税金の合計となります。 消費税支払…当月仮払税金貸方+当月未払消費税貸方の合計となります。 固定資産等購入…当月有形・無形固定資産借方となります。 その他支払…当月投資等・繰延資産等の借方+当月固定負債の貸方となります。
(4)予定・実績資金繰り表を作成する (2)の予定資金繰り表と(3)の実績資金繰り表を結合させ予定・実績資金繰り表を作成します。 (5)資金の先行管理を行う 毎月定例の経営会議で実績+未経過月予算=予定・実績資金繰り表を見ながら資金の先行管理をします。 1)資金繰りは全社の協力体制が不可欠です。営業は売掛金の回収、購買は在庫の極力の削減、全社挙げての利益確保が資金繰りを好転させます。 2)資金不足の会社は売上高至上主義になります。入金額に気を取られる経営は倒産まっしぐらです。問題は売上高ではなく粗利です。資金不足の会社は赤字覚悟の無理な受注経営に陥ります。 3)資金を先行管理し、損益計画を達成すれば、資金繰りに苦労しないように、年度初めに金融機関に経営計画書を提出し、資金調達の協力を確約してもらっておくと経営が楽になります。
バブル期に、多くの企業が有り余る資金をもって異業種に参入しました。その多くの企業が、経営破綻に追い込まれています。「隣の芝生は青い」という諺ではないですが、こつこつとした本業よりも、財テクや不動産業に走った企業のほぼ全部が破綻しました。これは私たちに本業の大切さ、企業の志や理念の大切さ、企業の社会的存在の大切さを教えています。逆に言えば、社会に貢献し、社会が必要としているならば、そのような企業は倒産しないということです。単なる金儲け、私利私欲であれば、そのような企業は、社会からも、社内からも破綻することとなります。少ない経営資本を本業一筋に費やし、その幹からしか、新しいビジネスなど生まれてはきません。 貴社は何業ですか? 会社が何業かを自問してください。ここに二つの会社の建設会社がありました。一つの会社は「うちの会社は建物を建てる会社である」と答えました。もう一つの会社は「うちの会社は快適な住環境を提供する会社である」と答えました。同じ建設会社でありながら後者の会社のトップは、デザイン・色あい・日照権・空調等広く、深く、消費者の立場に立って関心や研究がなされていくことになります。社員もそのようなトップの下、社員評価や給与システム・研修・資格制度が組み立てられることによって成長します。また、10年後その会社は、建材会社から設計・デザイン会社・設備会社・社員養成学校までグループ化しているかも知れません。確かに見た目では分かりにくいちょっとした【考え方の違い】が3年後、5年後、10年後に大きな差が生まれるのです。自社が何業かを自問自答し、経営理念に昇華させることはとても大事なことです。 会社の登記簿謄本を見てください。本業が何か分からないような目的欄に何でも入れている会社をときには見受けます。宝石・毛皮販売、飲食業、貸金業から不動産業まで30以上の目的が並んでいる会社に金融機関は融資をするでしょうか?そのような会社目的の経営者が信用されるでしょうか? 何業かと聞かれて「お金の儲かることは何でも」と答える会社には、お金儲けだけしか考えない社員が集まるだけです。そのような会社がまともであるわけはないし、継続することもありえません。 経営者の人格が経営体質を決定する。 経営者の人格で企業の体質は決定すると言っても過言ではありません。経営者が堅実か、バブリーかで、企業の経営体質は決定します。また、ワンマンかそうでないかでも同じことです。 これは、どちらが良いかの問題ではありません。問題はその先にあります。堅実な経営者は、経営の先見性や信用が必要です。そのためには経営情報や同業他社の動向に敏感でなければなりなせん。 また、バブリーな経営者には財務の知識が必須です。資金を集中させ投資するには、多くのリスクやそれを避ける情報が必要となり、また、判断の客観性を冷静に担保するための相談役が必要です。 ワンマンな経営者は意思決定が迅速です。しかし、そのためには正確な経理・経営情報と自己責任を取るという姿勢が前提です。ワンマンでない経営者は迅速な意思決定のために定例の役員会を開催する。集団で意思決定し、役員全員で責任を取る。そのような責任を取る取締役の選任が前提となります。一番ダメな経営者は、ワンマンだがうまくいかないときには人のせいにする。朝令暮改。業績が良いときは傲慢。悪くなると一転落ち込む。得意先にはペコペコ、仕入業者や社員に傲慢。このような経営者には志と長期なビジョンが生まれようがないからです。
プチカンパニ−で資産保全・節税対策可能 一石二鳥 中小企業経営者のほとんどは会社債務の連帯保証人となっています。筆者の知る限り何らかの連帯保証債務をしていない経営者は皆無です。 そのため、会社の倒産は、即自宅の競売につながります。60歳以上の高齢者で会社が倒産し、自宅を追われ、アパ−トの入居も断られ、ホ−ムレスにもなりかねない経営者が増加しています。そこで、経営者の自宅を保全し、節税対策も図れる方法をご紹介します。 (1)プチカンパニ−で自宅を所有 これは経営者の身内で連帯債務者になっていない人を代表者にして法人を設立し、その子会社に経営者のすでに所有している自宅を売却するか、新たに自宅を購入して、親会社がその子会社から社長の社宅として賃貸する方法です。親会社が倒産し、社長が連帯債務者として破産しても、子会社は親会社とは何の法的関係もなく、一切負債がのしかかってくることもなく、結果として経営者の住む家は確保できます。 (2)経営者の資産保全、節税対策の手順 1. まず会社の連帯保証人に配偶者・子供をしないことです。よしんば連帯保証人になっている場合は連帯保証人からはずす交渉をします。金融庁は代表取締役以外の第三者連帯保証人制度の廃止を金融機関に求めています。国民公庫も第三者連帯保証人不要の融資制度の充実を図りつつあります。 2. 連帯保証人になっていない配偶者及び子供等だけの子会社を設立します。 3. その小会社で自宅を購入します。または現在経営者個人で所有している自宅を時価でその子会社へ売却します。 4. 子会社は、自宅の減価償却費、住宅借入資金の金利、火災保険、諸設備等を経費化できます。経営者には親会社を介して社宅として貸し出します。親会社が経営者から頂く賃料は、社宅の規模によって異なりますが、一定の計算式で算出した賃料を経営者から頂きます。 結果 経営者はこれまでの住宅ロ−ンや家賃の大幅な減額が可能となります。差額は役員報酬を引き下げれば、所得税・住民税・社会保険料等が減額され、実質手取りが増加する効果があります。一方親会社の方でも、経営者の役員報酬が引き下げられ、法定福利費の会社負担分が減額となるばかりではなく、子会社の節税対策分の利益の付け替えが可能となり全体として法人税等と社会保険料が減額となります。 (3)分かりやすい事例紹介
手順1 連帯保証債務のない配偶者や子供を代表者にして子会社設立します。 【平成18年5月1日より新会社法で簡単に設立可能】 子会社設立 社長は代表者の身内 手順2 土地・建物を子会社へ譲渡 譲渡価格 時価 1950万円−取得価額【土地3000万円・建物未償却残高800万円】=差引譲渡損 −1850万円 子会社が借入し、経営者Aさんが連帯保証人をしてもかまわない。子会社の借入金で1950万円の住宅ロ−ンを一括返済します。 (社長が自宅を購入する場合)子会社で社長の自宅を購入し、社宅で会社へ賃貸 (社長が自宅を所有している場合)子会社へ自宅を売却し、社宅で賃貸 手順3 子会社の物件を親会社に貸し付け、社長の社宅にします。 その際の社長社宅の月家賃は以下の計算式で税務上の適正額を決定します。 ※小規模住宅の場合 木造なら建物132平方メートル・鉄筋なら99平方メートル(共用部分を含んで) [計算式] 建物固定資産税×0.2+土地固定資産税×0.22+12円×30坪=月額適正家賃 月4万円程度が社長から徴収する社宅費となります。 その結果、実質手取りを考慮すれば、社長の報酬は住宅ローン返済額が285,000円でしたので、社宅負担分の4万円を引いた245,000円役員報酬額を減額してもこれまでの実質手取りと変わらないことです。その結果、 1.社長の税金減額メリット これまでの1,200万円の年間役員報酬を245,000×12ヶ月、294万円減の906万円へ減額すれば、【所得税・住民税等 約180万円 社会保険料 97万円合計 115万円 会社負担法定福利費 97万円】となり、差引減税効果額は116万円にもなります。 2. 親会社の税金減額メリット 1)経営者の報酬が減額したことにより、会社の法定福利費負担が年間26万円減額されます。 2)減価償却費が増加【建物800万円として、中古資産の耐用年数が使え、「26年−9年+9年 ×0.2=18年」800万円÷18年=44万円増加】 します。 3.子会社の減税メリット これまで住宅ローンの金利は経費になっていませんでしたが、子会社の支払利息分年間1,950万円×3%=58万円が経費にできます。合計、支払利息+減価償却費 年102万円経費が増加し、法人税等が年40万円程度軽減可能となります。 ●注意点 1)これから自宅を購入する場合、子会社で事業資産を購入することになり、親会社・経営者個人の信用度にもよりますが、一般の住宅ローンと比較して返済期間が15年〜25年と短期となる可能性が高くなります。 2)既に個人で自宅を購入している場合、住宅ローンの担保提供されており、所有権の移転と担保付け替えが必要となり、銀行の了解が必要です。 3)これらの資産保全措置について、時価算定等もあり専門家の顧問税理士と相談される必要があります。 |
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