税務と法務の接点
税理士業界にフォーカスした“税務と法務の接点

第8回 債権放棄(債務免除)と寄附金

(2016.06.17)

 前回まで、債権放棄(債務免除)の方法について、解説してきました。
債権放棄(債務免除)が有効に成立した場合であっても、もちろん無条件に貸倒損失として、損金にできるわけではありません。債権放棄(債務免除)をした金額が、法人税法37条第7項第8項にいう債務者に対する「寄附金」であると認定され、寄附金課税の対象となる可能性があります。

 債権放棄(債務免除)した金額を「寄附金」と認定されないためには、債権放棄(債務免除)がやむを得ず行われたという必要性と当該債権放棄(債務免除)に相当な理由がなければなりません。

 この場合の例として、

法人税法基本通達9−6−1(4)
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額

は、貸倒れとして損金の額に算入するものとしています。

 この場合は、債務超過状態により、回収が不能であるという場合には、上記必要性と相当な理由があり、貸倒れとしての損金算入ができる典型例としてあげられます。

 ただし、このような典型例である回収不能等の場合でなくとも、債権放棄(債務免除)に必要性と相当な理由があれば、債務免除は寄附金とはならない場合もあります。

(子会社等を整理する場合の損失負担等)
法人税法基本通達9−4−1 法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い当該子会社等のために債務の引受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下9−4−1において「損失負担等」という。)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることになることが社会通念上明らかであると認められるためやむを得ずその損失負担等をするに至った等そのことについて相当な理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)
法人税法基本通達9−4−2 法人がその子会社等に対して金銭の無償若しくは通常の利率よりも低い利率での貸付け又は債権放棄等(以下9−4−2において「無利息貸付け等」という。)をした場合において、その無利息貸付け等が例えば業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われるもので合理的な再建計画に基づくものである等その無利息貸付け等をしたことについて相当な理由があると認められるときは、その無利息貸付け等により供与する経済的利益の額は、寄附金の額に該当しないものとする。

等がこの例といって良いでしょう。

 ここで押さえていただきたいのは、債権放棄(債務免除)をしたからといって必ずしも、貸倒れとして「損金」にできるわけではないということです。  そして、債権放棄(債務免除)をして、貸倒損失とする場合には、回収不能のケースが多いと思いますので、回収を試みたが、回収できなかったという事実を裏付ける証拠を残しておくことがとても重要となります。